これはいわゆる普通の機械材料の本ではない。普通の機械材料の本とは各論が詳しく載っている本のことだが,実際に設計する立場からいえば材料学を専門としていない限り,普通の機械材料の本というのはあまり使えない。設計者の視点では書かれていないからだ。<P>それに対してこの本は設計者のために書かれた本当に”使える”良書である。特に前述した普通の機械材料の本と異なり,通読するのに耐える貴重な本。<P>内容としては最初の導入に材料選定の失敗例が載っており,特性のひとつの側面だけを見ていると失敗するということが分かり易く述べられている(ただし例は少なめ)。後の章では設計屋・材料屋それぞれからの視点で同じ内容を扱っていて多面的な捉え方ができるなかなか斬新な切り口となっている。最後の章には物性値が纏められており辞書的にも使える。しかしやっぱり一気に読んで材料メーカーと話ができるレベルを目指して欲しい本。鉄系材料に偏っているのでそこだけは注意が必要です。
『失敗は成功のもと』ということで,過去の事故災害(新幹線のボルト落下事故等)を何点かあげ,それについて考察するところが大変参考になった。<BR>また,筆者の機械に対する考え方が人間に例えると,『材料は素質で,加工は環境』というような言葉で表現されるところが,新鮮さがあり刺激になった。<P>1つ1つの材料を,簡潔に整理されてわかりやすく書かれている。工業高校生,学生さんの教科書にも勧めたい。