マクロ経済動学理論、特に、異時点間の効用最大化をその基礎に持つマクロ経済モデルを構築し、ミクロデータからその理論の適合性を判定し、併せて、政策効果を測るというスタイルに貫かれている。無論、その理論は発展途上の要素を持つため、必ずしも理論通りの結論が得られず、パズルとされている要素(株式プレミアムパズルや予備的貯蓄に関連した慎重度の問題)等もある。しかしながら、マクロ経済学の最新の動きに手軽に接するには適した書籍と言える。それにしても、本書を著するにあたって著者が参照した論文の数には圧倒される。<BR>なお、本書の主要な主張である、実証分析に基づいた政策の企画立案(Evidence-based Policy Making)が重要であるという点には全く同感。特に、政策を事後的に分析するという姿勢があまりみられないことは問題であると思う。
パネルデータを用いて家計の消費行動や企業の投資行動を分析している。マクロ経済学で学ぶ消費関数や投資関数をただ推計することにどれだけの意味があるのだろうかと実感させられる。<BR> 期待に働きかける政策の重要性は理解できた。したがって、今後は期待をいかに把握するかという点を掘り下げていく必要があろう。<P> 本書を読み、マクロ経済学とミクロ経済学の両方を学ぶことの重要性を改めて感じた。経済学部の学生にはぜひ読んでいただきたい。<BR> また、当たり前ではあろうが、経済動向を分析する際にはトップダウンとボトムアップの分析を融合させることで本質的にインプリケーションのある分析ができると思う。世のエコノミストにもぜひ読んでいただきたい。