現代の経営者で最もユニークかつ気骨のある経営者である小倉氏。唯一の著書であった「経営学」にも感銘を受けたが、日経新聞に連載された「私の履歴書」に加筆した本書も、単なる自伝としてではなく経営書として秀逸の出来。「まずやってみなくては何もわからない」「視点はあくまでも顧客」といった金言は当たり前のことであると評論するのは簡単だが、実際に経営の魂として実践できている企業がほかにあるだろうか。わたしの知る限り、小倉氏とMKグループの青木定雄氏、アートグループの寺田千代乃氏の3人しかいない。まさにビジネスマン必読の書である。
電車の中で読んでいて、涙がこぼれそうになった――。<BR>元、ヤマト運輸社長で、現在、ヤマト福祉財団の理事長を務める著者の生き方そのものに、心の底から尊敬の念が湧き上がる。<BR> <P> 著者は「経営には、倫理が必要だ」という。20代、結核を患い長年入院生活を強いられたというその経験が、著者の倫理の基盤になっているのではなかろうか。自分の倫理に基づき、「おかしいぞ」と思ったら、官庁相手にも平気でケンカを売る。かと思えば、働く障害者の実情を知り、「今の日本で、月給1万円というのは許せない」と、自分の持ち株すべてを寄付し、自分の取り得「経営がわかること」を武器に、「障害者が月10万円稼げるための仕組み作り」に果敢に挑む。<BR> <BR> この人には、「自分の損得」という概念ち?ないのではなかろうかと思えてくる。ただひたすらに、自分の倫理を鍛え、そして追求するために生きているのではなかろうか。。。<P> MBA教材を含めたビジネスのノウハウ本には書かれていない、「人として大切なこと」を教えてくれる本である。<BR>
『宅急便』を生み出したヤマト運輸の元社長 小倉昌男(おぐらまさお)の足跡を通して、「運送行為は委託者の意思の延長と知るべし」を社訓とするヤマト運輸の一端が垣間見える良書。<P>ヤマト運輸は、1919年昌男の父にあたる小倉康臣によってトラック4台で創業。三越などの法人顧客を捉え、順調に事業を拡大していたものの、父の後を継いだ昌男の代になると、すでに法人取引は限界を向かえていた。昌男は1976年、この窮地を脱する為に、国内初の「宅急便」をスタート。事業を大きく「個人取引」へと転換した。この試みが大成功し、開始5年で月間取扱荷物1000万個を突破。1990年代には月間取扱1億個を超え、現在もなお個人宅配事業のトップを走っている。<P>引退後は私財を投じ精力的に社会福祉事業に従事。同じく小!!!昌男の記したものとして1999年に出版された『小倉昌男 経営学』(日経BP社刊)がある。