この本の貢献は,他の方も書かれていますが,簡単に列挙したいと思います。<BR>・近年,進歩の著しい,アーキテクチャーの戦略論の理解ができる。<BR>・中国脅威論に対する(いたずらに悲観するのではなく)論理的な回答(仮説含む)を用意した。<BR>・技術能力があるのに利益が上げられない企業に,(裏の競争力,表の競争力という)分析ツールを提供した。<BR>・文が平易でわかりやすい。説得力もある。<BR>・本人も述べているが,「要約」「繰り返し」が絶妙なバランスで起こっているため,話の流れがつかみやすく,記憶に残りやすい。<BR>・著者の情熱を感じる。<BR>・学説などの説明は省き,競争力の向上,収益の向上を賢明に説いている。<P>以上を勘案して,本当に素晴らしい経営書だといえます。経営に関係する人,必読の書です。
日本の製造業は、どこが強くて、どこがダメなのか?これから、どうするべきか、を説いた本です。製造業の競争力の分析、分析結果から見る各国の製造業の特徴、トヨタの分析を通じた「もの造りの組織能力」の強さとは?他業種での「もの造りの組織能力」の状態、アーキテクチャ(統合、モジュラー・・・)からの産業の分析、アーキテクチャの違いによる各国~特に中国~の強さ/弱さの分析、そして、日本の製造業は???という本です。<P>専門用語の連発、という本でもなく、講義をしているような文体で、読みやすかったです。一般の会社員ですが、十分読めました。大変頭の良い方が、丁寧に丁寧に説明してくれてるような本でした。<P>トヨタの分析には、びっくり。詳しく、本質を突いた(?)分析という印象です。ほかで読んだことないです。<P>また、アーキテクチャ論は「こんな見方もあったんだ」ともうー目が覚めました!「アーキテクチャ」という言葉は、いろいろな所で聞きますが、この本での分析のための「切れ味」は抜群です。
地に足がついた感のある戦略論で基本的に共感がもてる本です。なにより藤本氏自身の言葉で語られているのがいい。アーキテクチャーによる分類、裏の競争力、表の競争力、組織力といったフレームワークは製造業だけでなくすべての企業にあてはめることができるでしょう。私はサービス業勤務ですが、うちの会社はどこが強いかな?とこのフレームワークを応用して考えてみました。<BR>1冊読めば「モジュラー」「インテグラル」などの用語はもう体の一部として染みこむでしょう。私は、この分類自体は大した発見ではないと思うけれど、製品アーキテクチャーと組織力の相性や裏の競争力と表の競争力とのつながりを強調している点が、特に重要だと感じました。組織力についてはまだ体系化されていないようなので今後はそこの研究をしていただけるとより洗練されたモデルになる気がしました。