著者マルキール氏はエール大学教授、フォード政権の経済諮問委員の経済学の泰斗である。そのマルキール氏が株個人投資家向けに書き下ろしたミリオンセラーが本書である。日本で例えれば、宮澤喜一氏か竹中平蔵氏が国民向けに投資の教科書を出版したようなものである。この事自体が米国の国民への投資の奨励のような気運を感じる。<BR> マルキール氏は株投資の基本的な2つの流派として、ファンダメンタル派とテクニカル分析派(”サルのダーツ投げ”)を説明する。前者は企業の実質経営指数に重点をおき、その指数が長期的に株価に反映するとするものであり、基本的に経済学者はこの説を支持する。後者は株価は株市場の思惑の連鎖で企業の実態経営とは相関なく、チャート図から天気予報のように過去のパターンから予測をするものである。<BR> チャート分析にはさまざまなアナリストの持論が跋扈しているが、経済学者として、チャート分析の過去の研究結果からも、擬似科学であり否定をする。しかしファンダメンタル派でも、企業の成長予測不可能性故の限界を示唆する。<BR>そして結論の章ではリスクコントロールの重要性を説明し、相関のない銘柄でくみたてるポートフォリオによる空間的リスク分散とドル・コスト法による時間軸でのリスク分散が株投資で重要である事を述べて結んでいる。<BR> 昨今のテクニカル派のネット・デイ・トレーダーの方々には一読されておく事をお奨めしたい。
株式や債券投資を通して見た経済学書で、バブルの歴史やIT革命、会計処理や企業不祥事等など多岐に亘って論じながら、株等の投資経済学の奥義を解き明かしていて、面白い。<P> 過去の株式の記録や過去の会社の業績を用いてこれ等の将来を予測しても無意味で、それから利益を得ることは出来ない。<BR> 従って、テクニカル分析もファンダメンタル分析も、気休めにはなるが無価値であると言うのがウイーク型の「ランダム・ウオーク理論」で、ハーバード大学を筆頭に著名大学の研究の一致した結果である。<BR> 猿がダーツを投げて当たった株を買った投資でも、プロの業績と大差ないのはこの為で、手数料など払わない分得である。<BR> これが、著者マルキール教授の結論。<P> それでは有利な株式投資法はないのかと言うと、幅広く分散された株式ポートフォリオを買ってじっと待っていること、そして、効率市場理論の教えに従って、市場を広く代表するようなインデックス・ファンドに投資するのが一番良いと言う。<P> 面白いのは、損をする投資家は、チューリップ・バブルの時代から、一夜にして大金持ちになれるかも知れないと言う投機の過熱・馬鹿騒ぎの中で、誘惑に負けて財産を掛ける人、と言っていること。<BR> 要するに、株投資は、ゼロサム・ゲームで、トータルすれば、プラスマイナスゼロで、卓越したプロの投資家など居るはずがなく、証券会社の勧誘や分析等当たるはずがないので、賢くなれと言うことであろうか。<BR> <BR> 投資の指南書として読めば、ご利益は半減するが、経済学書として、そして、経済社会の進化を勉強しようと思って読めば極めて有益な本である。
一言でいえば、「堅い投資を勧める本」です。<BR>過去(大昔)のバブルの事例なども交えて、理論的に負けない投資法を説いており、個人投資家にとってのバイブルとなりうる書物です。<BR>株式投資の実践本としては余計な叙述が多すぎるきらいもありますが、<BR>興味深い教訓として読み進めていくと楽しいものです。<BR>本書は一貫してランダムウォーク理論に基いて書かれているので、<BR>チャートやファンダメンタルに凝り固まることの無意味さなども紹介しています。目から鱗が落ちる人も多いのではないでしょうか?