投資という行為に入れ込み過ぎることなかれ、しかしながら、投資という行為から目を背けることなかれ! 最近は表面的な手法だけを綴った安易な「金儲け本」があふれ過ぎてうんざりするほどだが、この本は、投資の哲学を教えてくれる良書。勝ち過ぎて浮かれているときも、負けて集中力が切れそうになったときにも、何かを得られる一冊である。
ビジネス・スクールでファイナンスを習うと、ランダム・ウォークを数学的に検証したり、ベータ算出の演習を初期にやらされる。つまり、ランダム・ウォークは、現代投資理論の基礎中の基礎なのだが、日本人の書いたものではあまりいいテキストがなかったように思う。投資の本と言えば、テクニカル系のものやファンダメンタルズ分析のものが、無作為にあり、個人で投資をしている人は、まずこの基本セオリーが身についていないのではないか。<BR>ランダム・ウォークは、株価はブラウン運動で変動する、というもので、経済学で言えば、完全情報下の一般均衡論にあたる王道であり、ブラック・ショールズモデルの拠って立つところなので、投資をする人はまず考え方でも抑えたいところ。<BR>これに、近年流行の行動ファイナンスで、マーケットの非効率に解説を加える、という優れものの解説書。投資理論を一貫したパースペクティブで理解するには、とても整理されたテキストだと思う。<BR>まあ、結論は、「敗者のゲーム」である投資に勝つには、稀に存在するリターンの源泉を見つけ出す修行を積む、ということになるのだけど、これが現実だから仕方ないですよね。投資の王道を進む勇気ある人に最適の教科書。
ファイナンスの勉強をして、ファンダメンタル分析の意義と方法がわかっていても、「世の中これじゃ説明できないよなぁ」と思っている人にお勧めです。<BR>行動ファイナンス理論の概要説明ののち、ファンダメンタル分析とテクニカル分析それぞれの短所を解説し、最後に望ましい投資スタイルとはどのようなものか、という話に持って行く全体の構成も理解がしやすいです。<BR>タイトルにある「図解でわかる」の図解も、冗長な図表化がされているわけではなく、必要な部分に適切な図やグラフが付けられているので理解の助けになります。