確かに面白い。<BR>それだけでなく、こんな学者人生もあるのかと小説以上に引き込まれた。そのうち知らず知らずのうちに現在の環境問題の先端知識を受け渡されている事に気づかされた。<P>著者は23年間という万年助手の身分での冷や飯を、何事も無かったがごとく記述している。そんな事はあるまい。苦しかったに違いない。悔しくもあったろう。<BR>そうした著者を見て育った東大都市工学科の後輩は、「あんまりこだわると冷や飯を食うことになるな」と考えたろうし、著者に同調した学生は学外でタフに活躍しているに違いない。<P>宇井、中西両氏が去ったあとの都市工学科はその存在感が無いに等しいくらいあまりにも薄い。著者の都市工学科時代の研究のダイナミズムが今は社会的にさっぱり聞えてこない。縮小再生産段階に入り込んだのだろうか。著書を読むとそんな感じを抱かせる。<P>ダイオキシン問題、環境ホルモン問題、そして今現在のホットなBSE問題、いずれの問題もファクトの追求がこれほど困難を伴うものとは考えも及ばなかった。 自分も含む大衆は感覚、情念で事を捕らえる。 ダイオキシンにせよ、環境ホルモンにせよ、少し沈静化したいまは書かれている事を素直に受け取れる。しかし、それぞれの問題がクレージーに吹き荒れた頃自分はどうだったっけな。もう忘れてしまったけど。<P>ともかく物事を冷静に判断するよすがとして、先達の類まれな経歴、研究を一読するのに不足は無い本だ。そこらあたりの若い学者先生から高校生まで一読おすすめ。5つ星。<BR>読んでみて損したと思ったら、あなたの受信機壊れてない?
本書は政策科学の書でもあります。<BR>従来、そのときそのときの「世論」に対応する形で展開されてきた環境行政は、科学的な根拠を欠くものでした。行き当たりばったりでときに利権誘導的になりがちであった日本の行政に対する本書の批判は痛烈です。<BR>しかし「環境リスク学」という非常に有望な新たな処方箋を提示した上での批判なので、ものすごく説得力があります。「批判のための批判」が持つ根の暗さとは無縁で、爽やかさすら感じました。<BR>環境問題のような複雑な事象では、「事実にきちんと向き合う」という基本的なことすら容易ではありません。「環境リスク学」が政策科学の基本となる日が一日も早く来てほしいと心から思いました。
タイトルが教科書っぽいですが、横書きの理系教科書ではなく縦書きの「読み物」です。メッセージも明確で本当に中西先生の文章は読みやすい。環境に興味がある人にはもちろんおすすめですが、行政に携わっている人・これから携わる人に広く読んでいただくのが良いかと思います。説明責任を強く問われる人々に必須のセンスではないでしょうか。