この本では、前半ではうつ病が病理学的にどのようなものかということが述べられ、後半ではその具体的な治療法が心理的、薬物、社会的な側面からそれぞれ述べられている。そして、著者ははじめから最後まで読むのが億劫になっているわれわれ患者に、温かいメッセージを与えてくれる。<P>「うつの人と言うのは、几帳面できまじめな人が多いといわれているので、初めからすべて読まなければ気がすまないと言うふうに考えてしまいがちですが、それはかえって逆効果です。ですから、後半だけを読んで、療養法を知った後に、余裕が出てきたら前半を読んでください」<P>ある意味目からうろこものであった。著者はうつの心理状態をよく理解している。そういうふうに思った。医師でも精神科見習いのような医師は、ここまでうつ病患者の配慮はできないのではないだろうか。そうして私も例に漏れず、はじめは一番前からすべてを読むつもりであったのだが、著者が言うように、後半だけをまずは読むことにしようと思った。<P>このほかにも、文章の一つ一つに著者の優しい配慮が見え隠れしている。著者は多くの医者がなりがちな高慢な態度になることは決してなく、同等の視線で患者に接してくれる数少ないお医者さんだ、そう思った。救いを求めているうつ病患者の人にも、うつについての体系的な知識を得たいという人にも役に立つ本だといえるだろう。
精神科医の方が書かれた本にしては、あまり偏った記述がなく、かつ読みやすい良書です。薬物療法だけでなく、心理的治療・社会的治療にも触れています。個人的には、ライフサイエンス分野でメンタルヘルスをビジネスとして扱う身として、すごく勉強になりました。
この本は前半にうつ病について、後半にはうつ病の治療について、最後にうつ病の人と一緒に生活している家族や友達、会社の人などが、どのようにうつ病と付き合えば良いかについて書いてあります。「うつ病がどのようなものかを知りたい人は前半から、うつに苦しんでいる人は後半から読み始めてください。」という著者の言葉から、著者のうつ患者に対する理解と配慮の深さを感じます。<P>患者、家族・友人、職場の方など多くの方への著者の思いがびっしりと詰まったこの本は星10個でもいいように思います。