旅をするとき、その地の情報、とくに歴史を知っておくとより旅が楽しくなります。今年、初の沖繩行きを決めて、早速、3冊の本を買いました。沖繩の歴史と文化を知りたかった。私は戦後すぐ生まれた世代ですが、それでも沖繩の歴史の文化についての知識は心もとない限りです。<P>最近では島唄や泡盛、沖繩料理がポピュラーになりましたが、断片的なイメージと知識しかありません。そんな私には、この本はとてもわかりやすく、短時間で、沖繩通史の概観と文化のコアについてより具体的なイメージと知識を与えてくれました。本を選ぶ際、沖繩だけに、沖縄の人か、国際的な視点でものを考えられる人のものという基準で三冊選びましたが、これはそのうちの一冊。陳さんは神戸生まれ、台湾系の華僑で、大作家ですが、中国側の資料も使いながら中国と縁の深かった沖繩の歴史をガイドしてくれます。明治時代の琉球処分、それ以前の秀吉の時代に始まる薩摩の琉球支配、仲介貿易でもっとも繁栄した明の時代(15世紀)、地勢的に日本と中国の2国に両属するしかなかった沖繩。<P>この本を読むと、沖繩の人の帰属意識は16世紀頃までは日本より中国の方が強かったようですね。久米村が中国からの帰化人の島ということも初めて知りました。「ニライカナイ」という沖繩古来の信仰も言葉としてしかしりませんでしたが、簡単にいうと「幸せは海の向こうからやってくる」という信仰のようです。だから、沖繩の人は外からやってくる人に伝統的にやさしくもてなすんですね。豚肉料理がメインなのも中国文化の影響が大きいからです。とにかく、質が高く、わかりやすく、読みやすく、安い本です。お奨めします。
中世・近世を中心に琉球の歴史から説き起こし、旅情あふれるエッセイも収録している。<BR>台湾にルーツを持つ筆者の沖縄を見る眼差しは暖かく、グスク、シーサー、石敢当などの由来の説明も懇切である。<BR>沖縄にいかれる方は、是非亜麻和利の乱の際、中城を守って死んだ護佐丸の話を読んだ上で城跡に行ってみて欲しい。<P>また、薩摩侵攻後の「一国二制度」の下で明・清からの冊封使を受け入れていた琉球に思いをはせながら首里城を訪れてみれば、単なる観光とは自ずと見え方が違ってくる。<P>15世紀の昔に琉球の貿易立国の志を高らかに謳った「万国津梁の鐘」(県立博物館蔵)の銘文「琉球国は南海の勝地にして....大明をもって輔車となし、日域をもって唇歯となす....舟楫をもって万国の津梁となし...」の背!!も非常にわかりやすく解説してくれている。<P>薩摩、戦前の日本、米軍により辛酸を舐めさせられ続けたが、今世紀沖縄は極東・東南アジアの一大貿易・金融センターへとその独立心・ホスピタリティーを開花させることができるだろうか。