「スローキャリア」という目新しい概念と、組織人事コンサルタントの第一人者である高橋俊介氏の著書ということで、期待を胸に早速手にとって読みました。上昇志向をもって成功してきたスターや経営者、起業家やプロスポーツ選手ばかりを偶像化し、その他の方法による魅力的な生き方を具体的に提示できていない昨今の風潮に対するアンチテーゼとしては、一定の価値を有する書であると思います。<P>ただ、「スローキャリア」を「スローライフ」にも似たような概念ととらえて読み進めてしまうと理解が促進されないかもしれません。というのも、高橋氏の言う「スローキャリア」とはあくまで仕事には一定のコミットをし、その中で自分としての価値を創造していこうという意欲があることを前提としているからです。そこにはある程度の競争やプレッシャーなども存在するだろうし、決して過酷さから一切逃れることができることをもって、スローキャリアだと言っているわけではありません。<P>惜しむらくは、現状の分析と新たな概念提起のみに終始している感が強く、スローキャリアを積極的に生きるための個々人のとるべき方策や、それを受け入れる企業の具体的な人事政策などへの言及が不十分だと思われます。しかし高橋氏の著書を見るかぎり、次から次へと著書をリリースしていくなかで更なる分析やより具体的な提言がなされていくように見受けられますので、次回以降の著作に期待したいと思います。
将来何になりたいか、何をしたいか、会社ではどういう仕事がしたいか、そういったことをキチンと見据えて勉強し、仕事を「選ばなければならない」という無言の圧力から、ちょっと自由になれる本。特に、旦那様が出世しない!とご不満の奥様にお勧めかも。
スローキャリアとは,今の取り組んでいる日々の仕事にこだわりを持って取り組むこと.そして,その結果として,キャリアが形成されていくということ.<BR>キャリアを目標化してしまうと,“今”が通過点でしかなくなってしまうことにたいするアンチテーゼ.<P>本書は,変化の激しい,先行き不透明なこの時代において,重視されるべきキャリア形成の一つの形として,この「スローキャリア」というものを一度考えてみてはどうですか?というものだった.<BR>ただ,万人がこうあるべき必要は無いということも,きちんと言及されている.<P>仕事をしていく上で,人間には4つの大切な能力があり,その中でもとくに“動機”が大切であると説く.ここでいう動機とは,意志や努力がなくとも,しぜ~んと体が動いてしまう,気がついたら何時間でもやっちゃってしまえるそういう性質のもの.<P>自分の中の動機をうまく活用して,“思考・行動特性”をつくり,たえず新しいものに取り組み,奥深さを味わいながら,学習し続けることが大切であるという.<P>また彼の研究によると,今の仕事に充実感ややりがいを感じている人は,いわゆる勝ち組というわけではない という.<BR>主体的に日々の行動デザインができていて,ネットワークが充実していて,スキル開発行動を日頃から取っている人.そういう人が,仕事に充実感をもっていて,そしてキャリアができているのだと.<P>仕事に対するモチベーションを考えるきっかけになる本です.