この本は、「愛国心」を通して日本と中国の国民性の違いを、わかりやすく説明されています。<BR> 日本人のヨコ軸と中国人のタテ軸からの説明は、説得力があります。<BR> 日本は国そのものに歴史がありませんし、世界の仲間入りをしたのは、この100年のことですから、諸外国との付き合い方としては、教えを請いながらの外交戦略でした。それが功を奏して、アジアの中では急激な発展を遂げることができました。<BR> 大国中国は、5千年の歴史と世界的な文明を持っていますから、自らを「中華」と自負し、他国を積極的に受け入れてこなかった。そのツケが、現代も続いています。<BR> しかし、中国は歴史に裏付けられた主張と文化を持ち、56の民族間の信頼の中で国を維持しています。<BR> 一民族国家(本当は違いますが)を自称する日本の独善性と、生活と生命を抵抗の中から守ってきた中国人の歴史・文化の違いを理解した上で、これからの両国関係を問いかけられています。<BR> 日本と中国の友好交流をしている私にとっては、大変参考になった書です。
作者は人文学者として、政冷経熱以外の「文熱」に着目している。中国人の愛国心の構成要素や、日本人の「愛国」との相違を分かりやすく解説する。作者は、日本人が客観的に横軸で思考するが、中国人は歴史という経験則に基づく縦軸で捉えると述べ、今日の日中関係をみれば同感できるものである。しかしながら同時に作者は最近激高する中国人の反日感情は、愛国教育によるものではないと否定するが、愛国教育には反日抗日という要素が含まれており、また反日抗日の歴史そのもの教える点は教育指導要綱でも明確である。更に、作者は日本で活動する中国人として客観的に両国をみようと努めるが、双方の文化の根本的な違いにより溝は埋まず、諦めるしかないという。作者は日中文化の交流の事例を多く他著でも採り上げているが、せっかく「文熱」に着眼するのであれば、両国関係改善に向けた「文化的」提案が期待される。