今は亡きサイード氏の、BBCでの講演録。知識人についての表象であると同時に、知識人が何を表象=代弁すべきかについて著した本です。その中に、サイード氏自身の生き方が顕れていると思います。<P>自分の足場を疑うことのない、無邪気で単細胞的な言説が溢れる中で、理性的に、客観的、普遍的なバランス感覚を保持しているために、どれだけの慎重さ、粘り強さが必要とされるか。増えすぎた“自称”知識人についての痛烈な批判の書でもあります。<P>講演録なので、非常に平易で読みやすいですが、内容は深いです。現代人が、どれだけプロバガンダに浸って生きているかを実感できます。
日本でも頻繁にニュースになるパレスチナ問題。<BR>本書でサイードが指摘している通り、現実では市民に対してイスラエル側の圧倒的な戦力による弾圧が加えられ続けている。<P>本書を読んでみて、<BR>そのことに気づくだけでも、<BR>十分に元は取れると思う。
弱者・・・パレスチナ人の権利や民族自決権を語ることに対する中傷・嫌がらせが、圧倒的なネットワーク(マスコミ・政府・大企業)によって行われるため、自己規制という思考習慣が蔓延するアメリカにおいて、「日々絶えず侵犯されている」世界人権宣言(1948)という「普遍的で単一の規準にどこまでも固執する」著者による「リスクを背負う」知識人としての赤裸々な告白である。<P>「このような社会機構に、あえて所属しないでいると・・・具体的な変革をなんら提示しえない・・・」<BR>というジレンマを抱えた「知識人はいつも、孤立するか迎合するかの瀬戸際に立っている」訳だが、<P>A・トクヴィルとアルジェリア、J・S・ミルとインド、福沢諭吉と中国・朝鮮・・・これらかつての進歩的知識人を「サイドの発想」として植民地的観点から読み直し、普遍化してゆくことが、脱構築の端緒である・・・