これはすばらしい本です。<BR>他にもシュリーマンをはじめとして、様々な明治初期前後の紀行がありますが、これほどまでに、日本の奥深くを赤裸々に記した本はないと思います。
日本が猛烈に変化していく一光景を写し取る。そこに出てくる我々の祖先は、確かになじみのある地名に住み、なじみの習俗に暮らしている、だが現在の自分を重ねてみるとまるでパラレルワールドに迷い込んだように微妙な違いが際立つ。<BR>似ているけれど違う、いや似ているからこそ違いが際立つ。我々はイザベラが賞賛したような美しさ、不衛生、野蛮さ、素朴さetc.を切り捨てて今に至った。我々はもう先祖のように戻ることはない。近代は良くも悪くも我々を大きく変えた、その証拠がこの本ではないだろうか。<P>確かに朝鮮紀行に比べればイザベラバードの日本の評価は高い、だがこの本を日本は李朝よりずっと良かった、という自慰手段にするのは政治的な読み方だと思う。
明治維新後の日本の姿が映し出されている。外国人特に、イギリス人やドイツ人は物事を実写することが上手であり、イギリス人のバードは日本をありのままにとらえている。一方日本人は、自国のことゆえ日本をそのままに写実をすることを一般的にしていない。その意味でも当時の日本を知る貴重な資料だ。また、バードは、朝鮮、中国にも旅行に行っている。その二つの紀行も刊行ているが、それを見ることにより、他国と日本を比べた際の日本という国が、より鮮明に浮かんでくる。日本はいかに自然が美しく、ゴミなどが道端に無く、きれいで親切で礼儀正しいかということが認識される。