ルイ14世とモンテスパン侯爵夫人、ルイ15世とポンパドゥール夫人にデュ・バリー夫人、「陽気な王様」チャールズ2世とカールスメイン夫人にネル・グィン、チャールズ皇太子とカミラ夫人、アウグスト強王とコーゼル伯爵夫人、バイエルン王ルートヴィヒ1世とローラ・モンテスら、王様の愛人こと「公認の寵姫」と呼ばれた女性たちの生涯を紹介した本書は、愛妾たちの容貌や性格、評判、君主を虜にする手練手管、嫉妬と陰謀が渦巻く宮廷でのサバイバル、途方もない金銭感覚など、読んでいて興味深いものがありました。スキャンダラスで、艶笑、逸話、時に辛らつな皮肉ありと面白く、蔑まされる立場にある彼女たちの言動は、個々の強烈な個性もあって、凄まじくも、時に男をやりこめる爽快さもあり、愉快でした。また文章の運びも、下品ではないあけすけな感じがかえって良く、決して自由ではなかった時代の女性観や、現代の王室の結婚ともからめ、当時の王侯が愛人を公然と囲った理由をうかがい知ることができます。図版は、本書に登場するカップルたちの一部の肖像画が口絵のカラーとしてあるだけだったので、少し残念な気がしました。
女って強いな、と思いました。<BR>歴史を作り上げてきた国王たちを虜にし、政治に介入する権利まで与えてもらって、自分の魅力をフルに利用して欧州の社交界を登りつめて行くその姿。いつの時代も女はしたたかですね。近代・現代のヨーロッパの文化がいまだに洗練され、かつ成熟したものに見えるのは、こういう女性たちが残してくれたものによる部分が大きいのではないでしょうか。女に生まれてきてよかったなと思った一冊です。