緑川ゆきという漫画家の話は、どうしてこう「はかない」のかなぁ、と思うことがあります。<BR>それは彼女の描く線がたよりなげであることももちろんあるんでしょうが、この作家の描く世界、描こうとすることが、「ささいな感情の揺らぎ」や、「ちょっとした感動」だからなのかな、と思います。<BR>この話は妖怪が見える主人公が、祖母レイコの残した、妖怪の名前を書いた「友人帖」の存在を知り、「名を返して欲しい」とやってくる妖怪たちとの日々を書いたものですが、その中にあるそれぞれの感情や、人と妖怪の意識の違いに戸惑いながらも、彼らと触れ合おうとする姿がとても前向きなのが素晴らしいと思います。<BR>この作家の描くキャラはどれも、自分の中にある「さびしい」という感情を知っていると思うのです。それを知っているからこそ、誰かを信じて、誰かに思いを託そうとするのだと。<BR>夏目の友人帖を貰おうとする妖怪ニャンコ先生がすごいカワイイ割に言ってることがシュールだったり、案外怖い妖怪がやってきたりして、侮れないマンガだと思っています。<BR>もっと評価されてもいいと思いつつ、あんまりメジャーになるのも勿体ないなぁ…とか思ったり。<BR>実はこの作家の雰囲気って、蟲師の漆原友紀さんと似ているような気がしています。
緑川ゆき先生の、短編形式による「あやかし契約奇談」です。<BR>白泉社の少女コミックスの中でも、この「夏目友人帳」は良い意味で異色の存在ではないかと。<P>主人公夏目の、心の痛みを知るからこそ行動できる優しさ。そんな夏目に呆れながらもつい力を貸してしまう「斑」ことニャンコ先生。<P>そして―毎回登場する妖怪たちですが、それぞれ人に対して色んな想いを抱えています。愛だったり、切なさだったり。それらの感情が、名を返す瞬間夏目の心にも直接響いてくる。<P>純粋で、尊くて・・・読者の胸をまっすぐ打ちつけてくるモノローグ。気が付けば涙がこぼれている。でもそれは苦しい涙ではなくて、「愛しい」涙。そう、この漫画を読み終えると、最初気持ち悪く見えた妖怪が、最終的にはとても愛しくなってしまうから不思議です。<P>短編続きだけど、短編であるがゆえに、一話一話が、とてつもなく深いです。小さな宝石みたいに貴重な気がします。
緑川 ゆきさんの新作シリーズ・「夏目友人帳」が出版されました。<BR> が、書店を覗いても(発売日)一冊置いてあれば良いほうです。個人的には、もう少し評価されてもいい、漫画家サンだと思っています。<BR> <BR> 一瞬の理解、一瞬の触れ合い、登場人物の幸福に至るまでの「一瞬」にかける、切なさ。「一瞬の幸福」であるからして、彼女の作品は得てして切なさが残ります。「HAPPY END」ではなく、物語の中盤に「一瞬の幸福」を描くからです。<P> では、では、今回の「夏目友人帳」ですが、主人公・夏目貴志少年は、<BR>①妖怪が見えるがゆえ、周囲にとって浮いた存在です。<BR>②家族がなく親戚の家を転々として来ました。<BR> ①、②の要素ゆえ、「うそつき」「寂しい子」「変な奴」といのが周りの評価です。<BR> そんな夏目少年が、ある妖怪の結界を解き、祖母の形見「友人帳」を狙う、<BR>ニャンコ先生と、契約を交わします。曰く「妖怪に名を返し自由にしよう。もし、自分が途中で命を落としたら、ニャンコ先生に、この友人帳を渡す」と。<P> これが、この物語の始まりです。<BR> 妖怪を設定にした漫画は確かによく有ります。しかし、そこは、緑川ワールド。「人は誰も彼女を分からなかった 彼女はいつもひとりだった」祖母をそう見ていた、ニャンコ先生。そして、現在、そうである貴志少年。この二人が組んで、妖怪に名を返すシーン・エピソードに、妖怪と人間の「一瞬の理解」そして、「一瞬の幸福」があるのです。<P> 丁寧なエピソードが込められた、妖怪少女漫画。絵に好みは有るかとは思われますが、個人的には、読んで欲しい作家さんの新作です。切なさだけではなく、作品内にある言葉のように、どんなに孤独でも「懸命に生きる姿が好きだよ。」と、森羅万象の存在を祝福したくなります。<BR> <BR>