読んで涎が出る本。<BR>そんなのコミックでは珍しい。<BR>それほど食べ物の描写は緻密でリアルです。<BR>しかも本当に実在するらしいお店。<BR>食ってから読むか、読んでから食うかの本です。<P>この主人公のオッサンもいい味だしてます。<BR>食べる事への哲学的追求の為には、<BR>店の頑固オヤジとの格闘も辞さないんです。
猛烈な空腹を抱えてさまよい歩いた末に、満を持して口に放り込んた食べ物がまるで地上のものとは思えぬほどに美味だったとき。そのあまりのおいしさに思わず同伴者とは言葉少なになって、「おいしいね」とか「うまいよ」とか頭を使わずに胃袋から発せられる単語だけは交わすものの、二人はそれぞれひたすらにその旨さを個人的に受け止めていた、という経験が一度ならずある。<P>もちろん、ものを食べる楽しさは誰かと分かち合う楽しさでもあるのだけど、「食べる」という行為だけを取り出して眺めると、元来至極個人的な営みであるわけです。<P>色んな街で、色んな状況で、一人ふらりと店に入ります。<P>店の様子や店員に目を配りながら、おそるおそるに、でも期待を込めつつメニューをひらき、今の自分を最大満たしてくれる最上の一品を探すため自分の胃袋とメニュー内容とを擦り合わせては模索して、ついにははっきりとした声で注文する。注文を終えて一息付けば、自分からは滅多に見ないお昼のテレビ番組に妙に感心したり得心したり、店の客筋からこの付近の事情を推察したり。さらにちょっと昔の回想なんかを重ねてうっかり感傷に浸っていると、そこに程よく食べ物がやってくる。<BR>そこから先は、ただ、ただ、食べる。 思って、食べて、 食べて、思って。<P>なんのドラマもないけれど、それでもある微妙で密やかな色合い。心の襞がかすかにゆらりと揺れるような、そんな話。癒し系カフェでなくとも、老舗料亭でなくとも、スノッブなレストランでなくともできる食の独り悦楽、私はこれから学びました。そして時に食べ過ぎるのです。うっぷ。久住昌之の関心力と谷口ジローの描画力。どちらかだけではその偏りにちょっと近づき難い二人の才能が、相乗効果をあげつつ遺憾なく発揮されている最高の一冊です。
井之頭五郎と名乗るフリーランサーの男が定食屋で/甘味処で/公園で/無農薬レストランで/深夜の残業でコンビニ弁当を事務所で・・・「ひとりで」食べる、食べる。それだけの短編集。<BR>なのにこんなにも癒されるのは何故?<BR>とにかく何にも本を読みたくないような最低の日、いつもこの漫画を読んでいます。<BR>続き・・・でないだろうなあ。。。