この本のアプローチはとても好感が持てます。<BR>データを自ら集め、研究対象である「社会」のフィールドワークを行っています。<BR>多くの「社会学」が、<BR>「本を読んで私も考えた」式の『読書感想文』に堕しているのとは大違いです。<P>・・・しかし、読んでいて息苦しくなりました。<BR>例えば、ディズニーランドの入り口に「イクスピアリ」が出来たことを、<BR>『都市空間のイメージ化』だとか、『都市部への侵攻』などと捉えることです。<BR>これって、ただ、人が集まる人気のテーマパークの周りでもっと稼げるから、<BR>ちょっと営業時間が長めにした商業施設を作ったまでのことじゃないですか。<BR>あの『侵攻』は舞浜駅改札で終わりです。<BR>せっかくフィールドワークをしたのに「社会学的色メガネ」で大げさに捉え過ぎです。<P>小さな事象を捉えて、大きなレッテルを貼り付けてバン!と大げさな結論に持っていく。<BR>これは、これからの社会学にとってはマイナスだと感じられます。<P>フィールドワークするアプローチはとても良いので、<BR>あとは「ポストモダニズム」だとか「ブリコラージュ」だとか「オリエンタリズム」だとか、<BR>大げさなレッテル貼りをやめて、現実をもっと等身大に認識して欲しい。<P>惜しいけれど、好感を持てる一冊。
~近年、「観光」は、社会科学において重要なテーマとなりつつある。経済学や観光学が観光産業・観光開発といったテーマを扱い、観光がもたらす経済効果・社会効果はいかなるものかと問いかけている。また、人類学はその一方で、「観光」とそれに伴う文化の復興・表象を通じて、人々がいかなる自己形成の戦略を採るかを描いている。そうした社会科学の領域に、~~もちろん社会学も独自のまなざしを向けて、観光を扱おうとしている。この本の著作者である両社会学者は、現在の観光の位置についての問いかけを試みる。それは一般的に普及している「本物・偽物」といった視点から離れることが本書の主題である。それは「現存する遺産とその真の観光」と「作られた観光地で見せつけられる偽の観光」といった単純な図式の否定~~である。どのような観光も、ある特定の立場の人間が見せようとするものと、それを自分たちなりに見ようとする構図の中で、妥協と交渉を得た結果に一つの観光地としてのヴィジョンが成立することをそれは主張する。観光とは、観る側・観られる側が、それを通じて自分なりの視点と解釈を含んで練り上げられていく、一つの場なのである。こうした主張を前提に、~~筆者たちは広くヨーロッパ・ハワイ・日本の様々な観光地をフィールドにし、脱・構築的なポストモダン観光学を提唱していく。新しい観光学の視点を提供する優れた一冊であるといえよう。~