まず、とても一人のプログラマー(敬意を込めて、あえて呼ばせてもらいます)がやったこととは思えないほどの、広範囲の知識と実装にあたってのシミュレーションに度肝を抜かれる。<BR>そして、それらがあまりコンピュータの知識がない人にも読めるように工夫されてかかれている。後半の実装は厳しいだろうが、P2Pがどういうもので、どういう問題があるのか、知りたい人にも勧められる。<BR>もちろんプロにも、さまざまなアイデアを提供してくれるすばらしい本だ。<BR>Winnyがあれだけの人に使われても、機能面で大きな問題が出なかったのは、これだけの思考がこめられていたからだ、と今さらながら感動した。<BR>英訳して世界に日本のプログラミング技術の凄さを誇って欲しい、と思った。
2004年に逮捕されたWinnyの作者による、Winnyの技術解説書。<BR>P2Pソフトに関する基本的な解説から、どういった思想でWinnyが開発されたのか、Winnyの目標は何か、Winnyはどのような設計で実装されているのか、といったWinnyの内部詳細に至るまで、Winny作者でしか答えられない様々な事柄が次々と述べられていく。<P>技術書ではあるが、予想に反して非常に読みやすかったことが印象的である。<BR>ネットワークに関する基礎知識さえあれば、すらすらと簡単に読み進められるだろう。コードの類は一切なく、設計思想や実装方法などを中心に解説されていることもあり、普通の読み物としても非常に面白い。<BR>思わずなるほどと何度も頷いてしまったり、こうなっていたのかと驚かされたりするところも多かった。<P>ソフトウェア開発に興味がある人なら、Winnyを使ったことがなくても一読することをお勧めしたい。Winnyの解説書という側面に加え、P2Pソフトウェアの解説書としても非常に有用である。<BR>逆に、技術書なので、単なるWinnyユーザーが興味本位で読んでみても、面白いと感じるかは微妙である。<BR>Winnyだけではなく、P2Pという技術に興味がある人向けの本である。
この本はWinnyがどのような仕組みでファイルの共有を実現し、かつ、偏りが少なくいかに通信効率を高めたネットワークを作るかを記した、著者の努力が非常に伺える一冊です。<BR>システムエンジニアの方なら、外部機器との通信を行う仕組みを設計されることは多いと思いますが、この本にはそうしたプロトコルや、通信の優先度の定量化方法と具体的な値まで記載されており、ネットワーク系のプログラムを組まれた方なら「自分でも作れるな」と思われると思います。<BR>また、シミュレーションを徹底する、バグや改善点が見つかればすぐにバージョンアップ(多ければ1日3回とか)といった開発者としての姿勢は、意識の高さを感じさせ、著者逮捕という悲劇を乗り切ってぜひ復活を遂げて頂きたいとエールを送りたくなりました。