関西の街場の雑誌『ミーツ・リージョナル』に連載していた頃から、注目していた。本になっていることがわかり、早速、購入。<P>書いてあることは難しくはないが、深い。けっして著者の言っていることが正しくはないだろうが、考えさせられるのは確か。そうか、そういう見方もあるのか、って。普段、簡単にやり過ごしてしまうようなことの裏側を見せてくれる。<P>お金、結婚、大学など、人生の節目節目について、著者の意見が示される。たとえば、お金について。「お金は交換のために、コミュニケーションのためにある」。結婚については「結婚は快楽を保証しない。むしろ、結婚が約束するのはエンドレスの「不快」である。だが、それをクリアーした人間に「快楽」ではなく、ある「達成」を約束している。それは再生産ではない。「不快な隣人」、すなわち「他者」と共生する能力である。おそらくはそれこそが根源的な意味において人間を人間たらしめている条件なのである」。などなどだ。<P>最後に著者は、自分が老いて、死んでいくことについて想像力を働かせつづけるよう薦める。
この本は書店で見かけて初めて読みました。<BR>それまで著者の存在も知らなかった。<BR>文系のだらだらとした自己満足的講釈は、<BR>意味のあることを言っているようで、<BR>何も言ってない様に(少なくとも私には)思える<BR>ことがよくあるのだけれど、この本は納得度が高かった。<BR>テーマが人生相談風にしてあるので、身近というのもあるけれど、<BR>経験と学問的視点から、分かりやすいけど軽々しくない解釈に<BR>なっていて、とてもよい本でした。
著者は先著の「寝ながら学べる構造主義」や「おじさん的思考」などで、現代思想の知見を卑近な事例に引掛けてわかり易く紹介してきた。<BR> 本書では20代から30代前半の若者を対象に社会について、特に就職や結婚について若者からの問いに答えるという形式で縦横無尽に論じている。また、導入部分では「文化資本」の偏在による社会の階層化や昨今の「負け犬」の議論について言及しているが、いずれにしろ、かつて「一億層中流」であった日本社会がその様な基準で分断化されつつあることについて、警鐘を鳴らしている。<BR> つまみ食い的にも読めるので、単純に娯楽としても、また就職や結婚などについて漠然とした悩みのある人も気楽に手にとって見て損は無いと思う。