おちゃらけたタイトルに似合わず,中身はとてもまじめな学問書です.このような本が教科書だったら勉強する意欲も湧いてきますね.<P>本書は,映画「踊る大捜査線」のシーンとセリフを題材に組織論とリーダシップについて論じています.映画を見た人ならばそのシチュエーションが映像的に理解できるので,著者の言わんとしている事も分かりやすいのではないでしょうか.<P>映画がたまたまケースとして適切な題材を提供していたのか,あるいは,このような組織論を意識して企画されたものか,どちらか分かりませんが,いずれにせよ単なるエンタテイメントにとどまらないところがこの映画の人気のあるところでしょう.本書を読んでから映画を見直してみると新しい発見があるかもしれません.
随所で紹介される「踊る大捜査線」のセリフ、筋書き。それらは、ファンにとっては、すぐその場面が頭の中に浮かんでくるものだ。そこからごく自然に組織論の古典、名著の珠玉のことば、内容に結びつけられていく。学問としての組織論が、いかに現実と結びつき、現実を説明するために構成されているのかが手に取るようにわかる。ただし、参考文献一覧が掲載されていないのが残念だ。
リーダー不在なアメーバ型組織か、指揮命令系統型組織か、さらに、核となる指揮命令系統はあるもののそれ以外は創意工夫が適えられる組織か、映画公開時から、よく練り込んで、描き込んでいると思っていましたが、待望の出版でした。ただ、映画で訴っえた両論の対比とせめぎあいの迫力が、文字になると減殺されるのは致し方ないとしても、やや平板すぎる点が惜しいと思いますが、十分に整理され、考えさせられるレベルになっています。