プラネタリウム自作で日本一有名な人物、大平貴之さん<BR>03年の渋谷東急文化会館でのメガスター公開で彼の存在を知った方も<BR>多いと思います。「個人で前人未踏の410万個投射のプラネタリウムを<BR>作ってしまった男」という強烈なインパクトでした。<BR>この本は、その制作の歴史を中心とした、大平貴之さんの自伝です。<BR>彼のHPに数々の自作のプラネタリウムの歴史が掲載されていますが、<BR>この本は、出版にあたって加筆・増量されており、感動再びでした。<P>あとがきに「出会いや支援があって今がある」とありましたが、<BR>「求め続ける情熱」こそが、その出会いと支援を呼び込んだんだと思います。<BR>普通の民家でサブミクロンオーダーの加工をやったという事実も凄いですが、<BR>困難や壁にぶつかる度にアイデアと工夫と度胸で乗り切るエピソードの数々に<BR>「プラネタリウム冒険小説」と呼ばせて頂き、友達に勧めまくりたいと思います。<P>星が大好きな小学1年の息子と付録の卓上プラネタリウムを一緒に作ってみたいと思います。
~いやはや、なんともすごい話である。本書を手に取ったとき、まず表紙写真に度肝を抜かれた。長時間露出をかけた天体写真のように美しい星野と小さな装置。そしてそこから導かれる「どうやらこのプラネタリウムは想像をはるかに超えるものらしい」という予感。本を一気に読ませる仕掛けとしては十分過ぎる。<BR>~~<BR>戦後まもなくであるとか、まだ日本にプラネタリウムがないころの物語ではない。著者は1970年生まれ。だからこそ「なんで今どきプラネタリウムなんかに…」という疑問もわくのだが、そうした背景や人生哲学は二の次に置かれ、描かれているのはプラネタリウムづくりの記録と記憶。すでに小学生のころからPlan(計画)、Do(実行)、Check(検討、改善)によりスパイラル的に~~技術を向上させる術を身!に付け、試作機から実用機、さらに改良機の開発と、小気味よく物語は展開する。<BR>~~<BR>プラネタリウムづくりに必要なパーツ、技術の開発の苦労などが綴られているが、それ以上の辛苦や失敗が行間から読み取ることができる。また、文章で伝えにくい技術は写真や図で解説してあり、かゆいところに手が届く。さらに、卓上プラネタリウムのペーパークラフトでは南半球の星空も盛り込まれており、遊び心を誘う。<BR>~~<BR>それにしてもこの人、ここまでいったい幾らプラネタリウムに注ぎ込んだのか。少し気になった。~
若い人が読むとこの著者は変な人に思えるかもしれませんが,私のように40歳以上の人になってくると,郷愁を覚える人も多いと思います。この著者は製作が困ったときには自分で勉強をする,多くの友人,先輩たちが協力してくれる,そういう中で物を製作しています。必要な物は,まず自作を考える。竹ひごの模型飛行機を作った人なら「ああ,私もそうだったなあ」と共感すると思います。また,アルバイト先の会社が特例で製作過程を見せてくれて,著者もそれ以上のものを学んだリします。確かにすごい世界!という本なのですが,それをささえたものは,かつてごく普通だった世界です。そして一番感動するのは,著者を取り巻く人々の親切な事。そして,ほろ苦く感じるのは,自分にここまでの情熱が続かなかったことです。付録の簡易のプラネタリウムを自作すると,投影する星空が切なく見えたりします。