野口さんの乗ったスペースシャトルの飛行も宇宙空間で修理したり随分危なっかしかった。この本を読むとスペースシャトルの技術的欠陥がよくわかる。宇宙開発は「公共事業」であるということもわかる。政治的圧力でハリボテのような開発になってしまったようだ。さらに日本も含めて世界がスペースシャトルがすばらしいと言う幻想に浸って予算と人材を浪費してしまった。米国のようにオープンな批判が活発な国でも失敗技術が長期間温存されるのかとも思った。それにしてもアメリカ政府の技術評価局が1989年にスペースシャトルの事故確率を50分の1としたのは、たいしたものだと思った。スペースシャトルは114回飛行して2回致命的事故を起こしている(チャレンジャーの爆発とコロンビアの空中分解)のでほぼ的中している。本書では、今後の日本の国際宇宙ステーション等へのかかわりなども論じ、結局他の国の後追いをするだけではなく自分の頭でしっかり考えなくてはいけないと説いて結んでいる。
読んで納得ですね。確かに、貨物と人を同時に打ち上げる必要もないし、そもそも人だけが帰ってくる帰還ユニットに翼はいらないというのももっとも。そこの基本コンセプトが間違っているから、スペースシャトルのロケットは120トンも軌道上に運べる能力があるのに、そのうち70トンは空のオービターなので、実質50トン分しか運べない無駄を生んでいるわけですね。第1段は液体ロケットでも燃料は液体水素よりもケロシンがいいというのも納得です。しかし、スペースシャトルの幻影に惑わされて欧州も日本も間違ったコンセプトに追随したわけですね。自分の頭で考えないと。同時に、頭が柔らかくて合理的な若い科学者がベンチャーで宇宙開発できる可能性があることにも気がつきました。誰かやらないかなぁ。株主になって夢に投資してみたい。
本書は、宇宙機ファンならずとも、日本人なら万人に読んで欲しい、そういう本です。内容は決して難しくありません。書かれてるのは事実のみ。誇大は一切ありません。にもかかわらず、スペースシャトルの欠陥部分が、これでもかと暴露されています。NASAは何てモノを作ったんだ?そんなもので人間を宇宙に飛ばしていたのか?と呻きたくなるでしょう。<BR> 恐らく、「いつかスペースシャトルで宇宙旅行を…」と夢見ていた人は少なくないはずです。私もその一人でした。それ故に、NASAがシャトルの欠陥を隠し続けてきた事は頭にきます。本書は、決して筆者の思想や感情が込められて書かれているのではありません。読めば、シャトルが失敗作だったということが”自分の頭”で理解できます。<BR> あとがきにも「自分の頭で考えよう」と書いてあるように、自分の頭で理解しようとする事は、本当に大事な事です。本書は、考えるための資料として最適と思われます。