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バンザイなこっちゃ! ( 岡林 信康 )

 消息不明、神話化、もはや生きる伝説とまで言われ、岡林信康が遂に、遂に!俗世界に姿を表してくれた。現在での農村の生活や関心事、そして「フォークの神様」としての過去のことなど、赤裸々に語られている。<BR> 現在の農村生活の話や、自然についてなどの話しも面白いのですが、やはり目を見張ったことが、『放送禁止歌』の著者、森達也も取材できなかったことについて語られていることである。『山谷ブルース』、『チューリップのアップリケ』の2曲について、これらの曲はどのような背景で、どのようにして生まれたのか詳しく語られている。さらにドヤ街での生活していた時のこと、農村にひきこもっていた時に演歌に傾倒したこと、美空ひばりと新宿ゴールデン街へ行ったことなどが事細かに語られており、今までおそらく思い出したくもなかったであろう「過去」とここまで前向きに向き合って「対話」したことはなかったのでは…。個人的に一番衝撃的だったのは、彼が訪英の際に、キング・クリムゾンのロバート・フィリップに「いいかげんに俺達の物真似はやめろ。日本独自のロックを聞かせたらどうだ」と罵倒され、それまでのフォーク・ロックを捨てて、日本独自のロックを探求し、エンヤトットに辿り付いたというエピソード。彼が「フォークの神様」などという迷惑な称号に迎合することなく、いかにストイックな生き方をしてきたのか、この本から溢れんばかりに伝わってくる。前向きに「過去」と向き合う岡林信康。この本は自分が伝説化されることを忌み嫌い、新たな音楽家としてのスタートとしての彼の決意書のようにも見える。そう遂に岡林信康は新境地に向かって動き始めたのである。<BR> 古くは、美空ひばりが、現在では石川さゆりがエンヤトットを歌い上げ、サンボマスターも彼の楽曲をライヴでよく取り上げているという。何故彼らが岡林信康の楽曲を取り上げるのか!?若い人にこそ是非一度彼の楽曲と生き様に触れてもらいたい。

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