ずいぶん昔に友人に進められて、この本を読みましたが、いまだに思い出します。ソフトウエア技術者としてそれほどデザインを重視していませんでしたが、目から鱗が落ちました。 機能重視で、いろんな機能があればそのほうがいいじゃん、と考えている方にお勧めします。<P>ちょっとうろ覚えですが、モデルがユーザに分かることが重要であるというメッセージは印象に残っています。たとえばCDプレーヤで、CDにも再生や早送りのボタンに三角形が使われています。別段本当に巻いてるわけではないのに、です。これはテープレコーダというモデルを利用してCDプレーヤの操作方法をデザインしているというわけですね。そんな話があったと記憶しています。
へんてこなデザインの例がいろいろ登場します。そういったものを意識してみればたしかに変なのはわかるのです。問題は、自分自身もそういったことをしてしまっている可能性があるということです。自分の仕事の中で「デザイン」を軽視、あるいは誤解してしまっていたことをあたらめて認識できました。<P> 何度か出てくるドアの例は古く感じるかもしれませんが、ベーシックな例だからこそ、汎用化して応用できる気がします。ただひとつの開くというメソッドしかもたないオブジェクトであるドアでさえこれだけデザイナーとユーザーの間の誤解が生じてしまうということは、いかに「理解する」ということが難しいかを教えてくれます。「理解した気になる」ではなく「本当に理解する」という意味での難しさで!!。<P> この本を読んでからは、最近建設された新しい建造物のドアを意識して見るようになりました。確かに、ノーマンがいうように、右に開けるのか左に開けるのか、押すのか引くのか、果ては、一面のガラスの壁のどこがドアなのかわからない例を結構見つけられます。新しいもののほうがかえってわかりづらく感じるのはどうしてなのでしょうか。東京丸の内の古いビルヂングのデザインはけっこうわかりやすいのと比べて、その理由を自分で分析したりしています。<P> なお、「デザイン」という言葉のイメージが人によって様々なことが、この本を選んで読むかどうかのフィルターになってしまっているかもしれません。あくまでも、アートに近い方の話ではなくて、「工業デザイン」とも呼ばれるような実用的なデザイ!ついての本です。デザイナーだけでなく、エンジニアと呼ばれる職業の方にも役に立つと思います。
ある道具をうまく使えなかったら、それはあなたのせいではなくて道具のデザインが悪いせいである。<P>この本の主張はこの1文に集約できる、と私は敢えて断定します。日常の道具である電灯のスイッチやドアのデザインを具体例に、使いやすくデザインするための原則が丁寧に説明されています。<P>実例はこのような日常の道具なのですが、ひとが使うためのものであれば誰にでも適用できる原則です。そして、世の中にはひとの使うためのものはたくさんあります。あなたの仕事や専門に照らして考えてみてください。「使いにくいのはデザインのせいである」と思える何かがあるのではないでしょうか。<P>私自身も、専門としている仕事にかかわる、しかしながら普通の意味の「道具」ではないところに関して、非常にこの本が参考になりました。読む前は思いもよらなかった収穫です。