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| チョッちゃん
(
石井 宏
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目黒の住宅街に現れたその犬は、近所で噂になるほど痩せこけ、毛も抜けていた。餌をやるといつも腹一杯に詰め込んでどこかに消えていくが、一向に太る気配はない。ある日、なにか物言いたげな犬の表情に誘われて後をつけていくと、犬は近くの空家に入っていく。そこで見たのは、なんと半分消化した食べ物を必死に口から吐き出して、三匹の子犬に与えている母犬の壮絶な姿だったのだ。<BR>様々な家族関係の病理が取り沙汰される現代において、自分を犠牲にしてまで子供を育てる賢い犬の姿には、気高ささえ感じられる。大切なことを教えてくれるこの本は、「チョッちゃん」からの遺産かもしれない。犬好きならずとも目頭が熱くなる、少し切ないノンフィクション。
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