ほぼ全教育を公的に供給するスウェーデン、「知識資本」を育てることに心血を注ぎ、世界一のIT国家に<BR>のし上がった最大の福祉国家の中学校の社会の教科書、ということで興味を持つ人も多いでしょう。<BR>中学生の子の家庭教師用の教材として購入してみました。 <P>この教科書は法律と犯罪、人間関係、経済、コミューン(自治体)、社会保障というセクターに分かれています。<BR>この本の最大の特徴は「あなた」という視点にたって書かれていることだと思います。<BR>法律の話での、あなたは○○歳になったら○○が出来ます、という紹介をするのもそうですし、経済のセクターは<BR>実際の子ども達の経済(お小遣い)の話から入ります。また、「課題」として「あなたはどう考えますか?」という<BR>問題提起が非常に多く入っています。実際の授業では毎授業ディベートが行なわれるのでしょう。<BR>「あなたと他の人々」というセクターがあるのですからうらやましいです。 <P>また、具体的な犯罪→裁判の流れを追ってみたり、麻薬の話、性の話など、全て生徒に身近な、具体的なところから<BR>入って、その後に説明をしたり、議論をさせたりする、という流れなので、とてもわかりやすく、問題意識を持たされます。 <P>中学生へのアンケート結果や、色々な統計の結果などもたくさん載せられ、スウェーデンの社会福祉の現状を<BR>知りたい方にもお勧めだと思います。特に、大きな裁量権がある「コミューン」の仕組みについて一章割いて<BR>くれていますし、例えばスウェーデンの犯罪者ケアーに関する市民の実名の意見を掲載したところでは、<BR>ある男性が「犯罪者についてあれこれ言うのは全くスウェーデン的」と言っていたり、別の人は<BR>具体的な「スウェーデン的」提案をしていたりと、実際スウェーデンの人が社会福祉国家をどう思っているのか、<BR>どうしてその体制をとっているのか、具体的に見ることができます。 <BR>私自身、いろいろ考えさせられそうです。<P>教育や福祉に興味がある人、スウェーデンに興味がある人、教師・親である人など、どんな人にもお勧めです。<BR>いろいろなところで絶賛されているのも当然です。
スウェーデンの学校で使われているホンモノの教科書。<P> まず法律を誰が決めているか、次に13歳の、14、15、16、17、18歳のあなたが(法律によって)何ができて何ができないかが登場する。次の章のタイトルは「犯罪」。誰が犯し、誰が被害に遭い、あなたが今どんなことをやれば犯罪となり、捕まって、どこに送られ、どんな処分をされるか、が出てくる。<P> それから犯罪更正施設についての、「ムダだからやめろ、もっと厳しく罰しろ」から「もっと犯罪者ケアを充実させた方がいい」まで、いろんな大人たちの意見が並ぶ(大切なことだが、大人たちの意見はすべて実名入りである)。<BR> アルコールや麻薬についての「神話」がまな板にのせられる。<P>「ハシシは感覚を広げる:この神話は、ミュージシャンやポップアーティストから広まりました。常習者たちはやる気を出し、ファンタジーを高めましたが、何も実行できませんでした」<P> 金持ちや貧乏な家庭の家計簿と暮らし向きが検討され、クレジットで物を買うことや、広告がどんな風にして購買意欲をかき立てるかを学ぶ。地域での暮らしや、離婚や病気、障害者について、あるいは失業したり、年老いたりしたらどうなるのかも重要なテーマである。<P> もちろん愛と結婚についての章もある。これについては、スウェーデンの少なくない人が、インドでの(親が決める)幼年結婚に否定的であることが触れられたあとに、スウェーデン人は親の義務を放棄しているという南インドのマドロスのアロキアサミィさん(学校の先生)の意見、「愛が結婚につながるのではなく(そんな愛は結婚生活の中で消え失せるだろう)、結婚の中で愛がはぐくまれるのだ」という意見が載せられている。
皇太子様が読んだ「子供」という詩が収録されています。<P>前半は聞いていて、心に痛い言葉が続きます。<BR>「批判ばかりされた子どもは 非難することをおぼえる<BR>殴られて大きくなった子どもは 力にたよることをおぼえる<BR>笑いものにされた子どもは ものを言わずにいることをおぼえる<BR>皮肉にさらされた子どもは 鈍い良心のもちぬしとなる」<P>そして、後半でとても暖かい気持ちになり、<BR>「しかし 激励をうけた子どもは 自信をおぼえる <BR>寛容にであった子どもは 忍耐をおぼえる<BR>賞賛を受けた子どもは 評価することをおぼえる<BR>フェアプレーを経験した子どもは 公正をおぼえる<BR>友情を知る子どもは 親切をおぼえる<BR>安心を経験した子どもは 信頼をおぼえる」<P>最後の一行で、素直に納得してしまいました。<BR>「可愛がられ抱きしめられた 子どもは <BR>世界中の愛情を 感じることを おぼえる」<P>「社会科」の考え方が日本とスウェーデンでは違うのだなぁと思いました。<P>社会のルールや仕組みについて単純に暗記させるのではなく、一人一人が自分の価値観や考える軸を持てる様に教育する姿勢は、私たちも見習うところが多いと思います。<P>今の社会では、以前は当たり前であった「言葉にしなくても理解してもらえる」という無言のコミュニケーションが成り立ちづらくなっています。<BR>子供に対しても「言わなくても分かるだろう」という前提を置かずに、この教科書のような教材を使って生徒一人一人の社会での位置づけや、どのように社会の一員となるべきか、を教育することが必要なのではないでしょうか。