アマゾンの物流センターへアルバイトとして潜入した体験を綴ったルポルタージュ。実データが公表されないアマゾン・ジャパンの実態を潜入により解き明かそうというプロセスは読んでいて興味深い。しかしながら、著者の矛先は物流センターで搾取される「負け組」と「勝ち組」の格差拡大に対する警鐘へと向かってしまい、肝心のアマゾン・ジャパンの実態解明は末端の現場から読み取れる僅かな情報からの憶測が多い。対象が外資系企業の現地法人であることから仕方のないところではあるが、著者も述べている通りのヒエラルキ型組織の中で、物流センターのアルバイトといった末端の人間が知り得る情報は限られている。プラスアルファとして上層部の人間へ肉薄するところあれば実態解明という点では厚みが出たと思う。<P>また、物流センターでの労務管理とコスト管理の徹底ぶりに驚きをもって焦点が当てられているが、現場の管理手法や目標設定に関しては今や当然のレベルという内容がほとんどであり目新しいところはない。<P>書籍に関連する業界の予備知識があり、アマゾンに対して何らかの興味がある方に取っては面白く読める一冊だが、物流現場の末端で体験したある一面を持ってアマゾンの「光と影」といった告発本的なタイトルで問題提起をするのは非常にナイーブだとも感じる。
もう数年に渡ってアマゾンを利用しているが、その流通の仕組みについて、この本を読んで初めて知った。我々が普段アマゾンに注文している書籍やDVDが時給たった850円の、数百人のアルバイトによって支えられているという内幕も新鮮だった。<BR>ある意味アマゾン批判とも言えるこの本も、他の書籍と同様アマゾンで流通され、アルバイトによってピッキング・梱包されてると思うと、皮肉である。
物流業界紙元編集長の筆者がアマゾンの物流センターでアルバイトとして働いた半年間の潜入ルポ。<BR>アマゾンの物流の現場が垣間見えるのと同時に、ニューエコノミー社会における労働のあり方まで思索をめぐらしている。<BR>アマゾンの物流センターの労働環境を取り上げることで、日本でも顕在化してきた「希望格差社会」の縮図を示し、今後の労働者の働き方に警鐘を与えている。<BR>海外からこの書き込みをチェックしているであろう作者の次回作に期待したい。