これはもし本人が生きていて読んだら、けっ、なんじゃこれで終わってたような気がします。これってトゥループが結構でっち上げた部分も入ってるんじゃない? 私自身何回か雑誌社の取材を受けたことがありますが、出来上がってきた原稿は、一つも私の言ったことを反映していないことがほとんどだった。だから、そういう意味でこの種の類の本は根本的に疑います。でも、でもですね、面白いんですよ、これが全く。はじめて読んだのは英国のとある本屋で見つけて買った十数年前のある日のことですが、その本を買った時イギリス人の店員のおにいちゃんがしきりにこの本を褒めて、マイルスは天才だ、ほんとに天才だと僕に向かって熱く語ってくれたのが妙に記憶に残ってます。もしここに書いてあることに少しでも真実があるならば、やはりマイルスは途方も無く身勝手な人だったんだろうな。でもその身勝手さが、天才っぽいというよりは、とってもチャーミングであること。きっとスィートな方だったんだなというのが良く分かる。頭ももの凄く良かったんでしょう。。しかしこれをいくら読んでも音は聴こえてこなかった。ただ、読み物として面白いだけ。本当の真実は、彼の残した音にあると確信しました。あれこそ真実。これは嘘。でもほんとに面白く楽しい嘘だと思う。
スナークさんのおっしゃるように、トループ苦心の口述筆記を味わいましょう。難しいことは言ってない(音楽理論のところ以外)し、黒人英語ってのがどのようなものか、かなり分かります。辞書にない用法が頻出するし下品な単語も豊富(?)ですが、読み進むうちに分かってきます。badがgoodと同じでmotherfuckerが誉め言葉だなんて、これを読むまで知りませんでした!<BR> マイルスの生涯を彩る数々の「伝説」が本人の口から語られるのが貴重。それ以上に興味深いのはサッチモのにやにや笑いや黒人女性たちの自信のなさの理由を分析しながら、アメリカ黒人の置かれていた状況を述べているくだり。友人だったマックス・ローチあたりと比較して社会的発言の少なかったマイルスですが、はっきり意識していたんでち?ね。<P> マイルス、あるいはジャズに興味のない人には馴染みのない登場人物が多くて退屈かも知れません。しかし(30~80年という)時代を知るには好適の書です。
マイルスの自叙伝。登場人物が非常に多い。<P>一番意外だったのはマイルスが自宅ではほとんどJazzは聴かないでラフマニノフとかストラビンスキーとかばっかり聴いていたというくだりだ。これはギル・エバンスやビル・エバンスの影響が多々あるようだが、凄い意外なことだった。コードから脱却しモード(旋法)に自らの音楽的方向を求めた彼の歩みと重ねてみると時にラテンやロシアの民族音階というものに道標があることは確かに納得がいくことだ。マイルスの柔軟な頭脳はごく自然に『You're Under Arrest』あたりでマイケル・ジャクソンの『Human Nature』やシンディ・ローパーの『Time After Time』何かまで取り上げちゃったりする。次から次へ自らの正しいと信じるものへと突き進む。まさしく『Cool』だ。<P>もう一つ意外だったのがMilesが絶賛を惜しまなかった2人の人物だ。一度もけなすことなく賞賛しっぱなしだったのはドラムスのTony Williamsは分かるとしてもなんとあのPrinceだった。WooMoo。MilesはPrinceの様々な音楽的なアプローチを高く評価している。へぇ、そうなんだという感じだ。<P>逆にむちゃくちゃ悪く言われているのがウイントン・マルサリスでこれまたふーんそうなんだというカンジだ。Milesの視点は非常に興味深いものがある。