訳本である以上、どうしても文章がわかりにくいのは仕方がないが、ファイナンス理論を学習しようとする読者は、次の点に十分に注意されたい。日本語として意味がわからない箇所がしばしば出てくる。訳者の問題だけでなく、制度の違いなどにより生じていると思われる。<BR> ①会計用語;<P> 会計用語がしばしば間違って訳されている。訳者は、ファイナンスの専門家かもしれないが、日本の簿記の基礎を学んだことがないようである。たとえば、減価償却累計額と訳すところが、累積減価償却額とか、利益と所得とをまぜこぜにしている。この本で用語を覚えない方が無難な箇所がところどころあるので注意。<P> 簿記会計の基礎を学習した読者はよいが、これからファイナンスを学ぼうとする読者はこの点に注意が!必要である。<BR> ②日米の違い;<P> これは米国のテキストの訳本である。たとえば、税とファイナンスとの関連がしばしば出てくる。税制が日米でかなり異なるので、その点に注意が必要である。あくまでも、税がファイナンスにどのような影響または効果があるのか、という点に注意が必要である。<P> 原書はおそらく非常に良い本であろうと推測できる。したがって、この訳本は原書を読むための下調べ、というように使うと良いのではないだろうか。
日本語版を発売当初に購入してまして、原書がただいま、授業の教科書であります。<BR> ある程度、金融の知識があるという前提で、Corporate Financeの全体像を再整理し、そこから、自分の興味分野を見つけて、更なる学習につなげるというのがベストと思います。<P> という点からすると、ビジネスマン向きではないと感じます。金融マンが業務上で参照するための本としては、より議論の的を絞ったふさわしい書籍があると思います。(これは短所ということではなく、そもそも著者の意図が広く浅く、網羅することにありますから。)<P> 金融を勉強した大学生が卒論のテーマ探し、または金融業界への就職前に眺めてみる。もしくは、金融機関や事業会社の金融関連の部署に勤める若手社員が長期休暇の3日ほど使って、一気に読むということでしょうか。
私がMBAコースで学んでいた時代の教科書。今でも職場で常時使っています。<P>この本が類書(といっても邦訳されてるのはこれくらいだけど)と違うのは、理論の説明に加えて、現実のケースをふんだんに取り入れている点。理論の説明もわかりやすいですし、レベルは落としていない。たとえばこの本を完璧に読みこなした人と、現場のアイ・バンカーとの差は、理論的な面ではなく、実務的な嗅覚だけです(それがもちろん大きいのですが・・・)。<BR>本の分厚さに辟易する人がいるかもしれませんが、米国の教科書は、分厚いけどわかりやすい、というのが売り。説明がくどいくらいなので、行間を読まなくてはいけない日本の教科書と違い、すらすらと読み進められます。<P>ただ邦訳板をばらばらめくってみた感じでは、原書のなめらかさが失われている感じ。この本に限らず、教科書で使われている英語は極めて平易なので、原書を買われるのも一考かもしれません。こう書くと嫌味に聞こえるかもしれませんが、一度原書を手に取ってみてください。ある程度の英語力のある人ならすらすら読めるはずですし、専門用語はむしろ英語で覚えていた方が現場では使えます。