私自身が行き過ぎた成果主義の会社にいるので、日頃からその弊害をよく目にしているせいもあってか、成果主義をこき下ろし年功序列型の素晴しさを語る著者に共感できる部分が多かった。<BR>・・・がちょっと行き過ぎの感もある。成果主義も年功制もそれぞれいいところをバランスよく取り入れていくことが大事だと思う。<P>バブルがはじけて「日本企業のやり方は全てダメ」と思い込んでしまい、自信を失っている人には目覚まし変わりにいい本かも知れない。痛快だ。
成果の意味を明確に定義しなければ、成果主義という人事制度は不可能だ。そしてその成果は企業により職種によりポジションにより異なる。その定義はどうすれば可能なのか?しかしこれは難しい。どのように適正に目標を設定し、評価するかより、組織や業績、社員の成長といった観点でどのような思想をもって運用すべきか、を考えるべきだ。この本は、薄っぺらにも目先ににんじんをぶら下げるような施策が成果よりも自主的な意思を退行させることを指摘し、人事や組織上部の、評価や運営をする側のエゴ、代行主義の存在を糾弾し、その解消が困難であるばかりでなく、成果主義という思想、そのものが間違っていることを明確にする。大手電機メーカーの元人事担当者が書いた本を併読するとさらにわかりやすいと思う。
組織と人間行動を科学する経営学が積み重ねてきた理論をやさしく丁寧に解説しながら、成果主義の非科学性を見事に証明している。成果主義という科学的根拠の無い流行の制度を導入してしまった経営者や人事担当者は反省しつつ精読すべきである。<BR> この本を読めば、成果主義が如何に虚妄か見えてくるはず。一時的にしか効用のない劇薬でもある。その虚妄を知った上でリストラのためにこの劇薬を悪用する経営者がいたとすれば、そのリストラが一巡した後に長期に亘ってとても深刻な副作用に悩まされるであろう。そのことを知る上でも珠玉の一冊である。