心理テストのプロ中のプロが書いているだけあって、心理テストの限界に納得できる本である。著者が伝えたいのは、「心理テストはウソ」ではなく、「心理テストは根拠が希薄なものが多い」ということだと思います。<P>心理テストは極端にいうと、テストをするその時だけの心理状態を見る可能性が高いので、それこそ”普通に”心理テストをしてはいけないし、一つの心理テストを鵜呑みにしてはいけないと思います。正確に見るのなら、古来からの叡智が詰まった統計学（占星術、姓名判断等々）の方が適切だと思いますが、科学的な視点が不可欠な現代では、万能ではないとも思います。<P>誰しも自分の本質は分かりづらいので、心理テストは今後とも需要があると思いますが、ほとんどが本書が言うように根拠が希薄なため、心理テストによって「自分探し」をしたい場合、「複数の心理テストをしなければならない」と思えたのが最大の収穫です。<P>専門的内容ですが、心理テストに深い興味がある方、心理テストでショックを受けた方に最適だと思います。<P>仮に心理テストで自分を知ったとしても、知るだけで、現状に即したアドバイスがないので、使い方が重要だと思います。
こういった批判は歓迎するが，どうせならもっと本気で<BR>批判していただきたい。<P>まずブラインドアナリシスなど，そもそも本来の使い方ではないし，<BR>その他の情報無しでは妥当な解釈に近づけない事が分かっているから，<BR>臨床ではだれもやらない。<BR>精神病理をよく弁別しないと言うが，そもそもロールシャッハ法の<BR>得意分野は人格理解と治療計画の立案である。使い方が誤っていう<BR>ということと，その検査自体が妥当でないという事は同じでない。<P>研究に関する話題はあまりに一方的である。<BR>ロールシャッハの指標と質問紙の間にはなんの相関も見られなかった，<BR>と引用しているが，それは今日蓄積された膨大な研究群を無視した<BR>言い分である。例えば，氏の妄信するBIG５質問紙との統計的な関連も<BR>見出されている。<P>この批判にはその他多くの問題点が見られるが，もっとも重要な点は，<BR>ロールシャッハ法を厳密な検査ではなく，半構造化面接として<BR>捉えようとする一連の動きに全く触れていない事だ。エクスナーを<BR>批判するのは良いが，なぜ同格のワイナーの動向を無視するのか。<BR>あまりに一方的な議論である。<P>優れた批判は優れた反論を生みうる。しかしこの批判はあまりに<BR>古く，一方的だ。しかしそのような批判であっても，科学の進歩<BR>には批判が不可欠なものであり，一定の評価を与えたいと思う。
心理テスト、とくにロールシャッハテストなどの投影法が実証的な根拠が相当怪しいと言うことは、海外の研究や実証的な研究にもしっかり目を配っているきちんとした心理学者はわかっていた。ところが実は日本の臨床心理学者は、この種のテストの解釈することで自分の専門性を築いてきたので、これらの研究を見て見ぬふりをしてきたのだ（あるいはそもそも見えなかった人や英語が読めなかった人も多い）。現在、臨床心理学コースの大学院ではいまでもロールシャッハテストの解釈の実習は主要なカリキュラムだし、少年鑑別所や精神鑑定ではいまでも、ロールシャッハテストは主要なツールとして使用されている！！とても恐ろしいことだ。ただ、この「秘密」を暴露するには業界でいきていくためには相当の覚悟が必要である。しかし、科学の発展をほんとうに真剣にかんがえるなら、この本を公にした村上氏のように行動すべきであろう。
