孫正義というダークな部分もヒーロー的な部分も兼ね備えた強烈な個性をもつ人物を対象にしているだけに、面白い。<BR>特に、豚の世話をし、危険地帯で育った幼少時代。日系三世ということで差別を受けたこと、多くの人を踏み台にしてのしあがってきたこと、バブルを煽ったこと、脱税行為、怪しげなリゾート開発などダークな部分が生々しい。<P>丹念な取材、興味ぶかい豊富なエピソード、巧みな文章力からも一級のビジネス人物論になっている。<P>筆者の孫正義に対する評価は、「美しき誤解をしているうちに他人のふんどしで頑張る」であり、ソフトバンクに対する評価は「孫の欲望を自己増殖させてきた企業」というもので、決してよいものではない。ある意味、批判的精神があるともいえるが、ただ、最後に出てくる筆者の裏切り行為は気になる。<BR>本書の最初のタイトルは、「蜃気楼」だったが、そのタイトルを孫正義が嫌い、タイトル変更を条件に孫正義がインタビューを受けてくれたということが最後に書いている。そして、「孫の果てしないマネーゲームは終焉を迎えようとしている。美しいがゆえに儚く消える蜃気楼のように」と結んでいる。人のプライバシーまで調べあげて物書きで儲けたあげく、どこかで仕返しをするライターって悲しい。
つまらない、なりあがり物IT成功本を読むくらいなら<BR>本書をじっくり呼んだ方がいい。<BR>彼には賛否両論あろうが、最近は「通信」に絞った<BR>事業展開をすすめていることはいいことだ。<P>誰にでもいろいろな遠回りや失敗はあるが、彼の<BR>場合は「はなはな目立ちすぎる」だけ。<BR>それだけのことです。
ロックスターの自伝を読むかのごとくであった。<BR>学校を中退して(落ちこぼれ)単身アメリカに渡り(行動力)<P>懸命な努力で学位を取得して(復活と執念)会社を興し(一国一城の主)<BR>ビットバレーではチャーター機で乗りつけ(まさにロック!!!)<P>企業家達のカリスマになった(伝説の誕生)。<P>そしてこの手の俗悪本と本書の永遠的な違いは、その自己批判能力にある。<P>孫のコメントからは、ただのイケイケな成り上がりではなく自己を批判し省みる謙虚な精神をうかがうことができる。つまり、あまりに人間の幅が広く誤解されてしまうということだ。<P>成り上がりについて<BR>確かに上品とは言えない、「粗っぽい」振る舞いも見せるときがある。<BR>だが、平清盛やブッシュ大統領(子)はじめ多くの改革者はそのように既成の世界の外から出てくるものであり、そういうひとこそが恐ろしいのだと唐沢俊一さんが仰っておいでだ。<BR>その通りなのかもしれないとこの人を見て思い、知って修正しつつも納得した。アンチ精神で生きているわけで全然なく、エネルギィが多いから多くの世界に干渉することとなり、その結果取りこぼしが出てくる。<P>そんな傑出した人物を生き生きと描く。