面白い1冊だ。米国の視点からではあるが、我が国でもこうした事態がおこりつつあることは周知の事実だ。<BR>情報保護とセキュリティと関連ビジネスとの境目が段々<BR>なくなってきていて、ひとつのコングロマリット化して<BR>いく様がよく理解できる。
アメリカでは情報技術の進展に伴って、個人情報を収集して巨大なデータベースが構築され、売買され、なおかつ、「24」のようなテロ対策の捜査に使われているという。杜撰な管理のため無実の者が、テロリストと疑われたり、就職できなかったり、融資が受けられないことが起きている。情報技術の進歩はトレーサビリテイの向上に役立つが、その一方で他人に知られたくないことまで知られてしまう、勝手にプロファイリングされて犯罪者に仕立てられてしまうという危険を孕んでいる。(大手ポータルサイトが放送局を欲しがるのは通信と放送の融合が目的ではなくて、テレビを見た人をポータルサイトに誘導し、ログインさせてどのようなサイトを見たのか、cookieを使って行動特性を探り、マーケティングデータを収集するのが目的なんですよ。視聴率より正確なone to oneのデータが収集できます)安心安全な社会がいいのか、それとも心の内はそっとしておいてくれる社会がいいのか、近い将来、私たちは問われることになるだろう。なお、本書はアメリカの新聞記者が書いているため、アメリカの社会事情に疎い日本人にはやや冗長、退屈に感じるところもあるのでマイナス1点とした。
イラク戦争における米軍の傭兵や下請警備会社の存在が話題になっているが、この書がテーマにしているプロファイリング・ビジネスとは、米国政府の諜報活動の下請産業のようなもので、かつては国家の中枢機関がになってきた諜報活動が、いまでは民間企業へのアウトソーシングによって支えられていることがわかる。ケースに登場するアクシオムやチョイスポイントはいまでは売上高1000億円規模の大会社で、しかも株式公開会社として堂々と〝諜報ビジネス〟を行なっているのが興味深い。なかなか面白い切り口、中身です。