作者が表現したい事は十分に伝わってはきました。<BR>精神疾患は誰にでも起こり得るというのを目耳にしていたので、それ程<BR>驚くような内容ではなかったのですが、現場の医師の書という事で、<BR>より踏み込んだものを垣間見た感じです。<BR>ただ、守秘義務が課せられている医師の立場上、書ける事の限界がある<BR>のか、一番面白く興味を引く患者の日常や日常とのギャップの描写を<BR>始めとしたプライベートな面の記述がそれ程多くなく、作者の苦慮を<BR>感じます。<BR>記載の多くは、治療や治療時の患者の様子や担当医師であった作者の心<BR>の内などに割かれてますが、正直前者のそれに比べ面白みに欠けます。<BR>また、読み進める中で、スピードダウンを感じ、途中から読むのが億劫<BR>になる事もありました。<BR>守秘義務云々という事から考慮すると、本書に書かれている事は事実を<BR>元にしているというレベルであくまでもフィクションであって、私とし<BR>てはノンフィクションを模した佳作程の印象しかありませんでした。<P>あと、行間取り過ぎに加え、ページ水増しと思えるような写真類はいら<BR>ないです。 内容から見ても高すぎで、普通に<BR>装丁して出して欲しかったですね。
「精神科」というと、殆どの方が避けてというか偏見的な感覚でとられてしまいますが、本書を読むと医師から患者に対する思いやりが伝わってきます。私自身も心療内科への通院歴がありますが、医師の思いやりがあったからこそ今の自分があるのだと思います。確かに医師の目から書かれた本ですので専門用語も多数ありますが、一人でも多くの人に「精神科」というものを理解してもらいたい・・・そんな一冊です。備瀬先生はまだまだ若いですので、続編が出ることを期待しています。
精神科医というと、普段着でのんびりとカウンセリングしている姿を思い浮かべる向きもあるかもしれない。しかし、救命センターに運びこまれる患者の2~3割は精神科対象疾患(うつ病の自殺、統合失調症や人格障害の急性興奮期、アルコール依存症、思春期問題行動や犯罪がらみ、などなど)とであり、その担当精神科医はかなりハードボイルドな生活を強いられている。これは、沖縄出身の若き精神科DR(卒後10年)が東京都立病院ERでの体験が日記風につづられ、精神患者さんへのヒューマンな姿がうかがい知れる好著。DSMや古典的教科書では解らない、精神科疾患の真の姿が専門外の人間や一般人にも理解可能な形で提供されている。大学の権威者や多くのしたり顔の学者精神科医と異なり、丁寧な文体から現場の若き医師の良心が伝わってくる。