なんかタイトルに惹かれて読み始めたら、どうも最初はなんだか訳のわからない話にまったく進まないストーリーにかったるいなあと思い、思わず投げ出しそうになりました。<BR> 絶妙な台詞のやり取りが結構面白かったのでしばらく我慢して読んでいくと、あらら、中盤から一気に話が見えてきて、とてつもなくシュールで現代的な時代劇の始まり始まりといったところ。こりゃ傑作じゃん!!、となりまして候。<BR> 正統派時代劇を期待して本書を手にとる人はまずいないと思いますが、ここに描かれている表現はまさにもう好みの問題かもしれません。ですが、終盤に出てくる大臼様が出てきてからはもう空前絶後の展開で個人的には小説でこれほどぶっ飛んでいて、かつその絵が違和感なく頭に浮かぶというのは初めてでした。<BR> これ完全映像化出来たら、大傑作か大こけかのどちらかでしょうね。でも見てみたいなあ、この小説の映像化(笑、必死)
恐るべき小説である。これまでの町田康の作品と比べて段違いにスケールが大きく、言語的インパクトも際立っている。もともと天才的な文章を書く人だとは思っていたが、これでいよいよ現代を代表する作家になった。<P>こんな馬鹿馬鹿しくって下品な小説なんて外道だ、文学はもっと心の機微を表した繊細なものでないと……と思った方は、大いに誤解している。はっきり言って町田康ほど繊細な作家はいない。彼は夏目漱石の再来と言いたいほど徹底して繊細かつ知的であり、しかも非常に優れた文明批評家でもある。「パンク侍」では非常にたくさんの変人が出て来て変なことを好き勝手にしゃべっているが、これが悉く、実に見事に現代人を風刺している。全然雰囲気は違うけれど、「我輩は猫である」を髣髴とさせる饒舌な文才だ。
かなりお厚い本。「最後まで読みきれるかしら…」と手に取ったときは心配だったのですが、杞憂でした。<P> 相変わらず、というかますます磨きのかかった切れの良い文体と、軽妙な会話のやり取りで全く読者を退屈させません。特にテーマを掲げない、そんなストーリーが却って小気味良い(うーん、もしテーマがあるとすれば「虚無感」?)。 <P> 「サムライ・フィクション」の中野裕之あたりが監督で映画化したら、かなりパンクで!イイ感じのものが出来あがるんじゃないかな~と思いました。暗殺者の刺客役はもちろん布袋さんでしょう。<P> 一気に読ませてくれる小説ではありましたが、町田康の本領はやっぱり中・短編だな~という感が否めなかったので☆マイナス1としました。