怪しげに感じる方が多いと思われる題名ですが,著者は博士号を有する技術者です。それもソニーでCDやワークステーション「NEWS」,ロボット犬「AIBO」の開発を手掛けた方です。その天外氏(本名は土井利忠氏)が突き詰めてきた「幸運の女神といかに付き合うか」をまとめたものが本書です。<P> 多くの人が「運命」に翻弄されて人生を送ります。「(中略)「運命」は,必ずしも偶然の産物ではなく,どうやら何らかの「法則性」がありそうだ(P. 2)」ということが本書の始まりです。「まえがき」にある通り,「運命」は現代科学で説明がつかず,迷信として切り捨てることが常識的とされています。しかし,「本書の基本的なスタンスは,そのように一般常識で切り捨てられ,排除されたものの中から,ドキッとするような真実を拾い出し,皆の目にさらしていくところにある(P. 3)」と著者は明言します。<P> 天外氏の主張の詳細については誤解のないように本書を読んで頂きたいと思います。しかし,その主張はしまずこういち『マーフィーの黄金律』(産能大学出版部),米長邦雄『人生一手の違い』(祥伝社),渡部昇一・米長邦雄『人間における運の研究』(致知出版社)といった本の内容と矛盾しないものです。上記の本では主に個人の視点から述べられていますが,本書では組織(構成員)と運との関係についてより重点が置かれています。<P> 上記の本ではまったく触れられていませんが,「幸運」より更に大きくて捉え難い「大河の流れ」と天外氏が称する法則性があるそうです。この「大河の流れ」についてはラビ・バトラ『神との約束』(PHP研究所)の内容が参考になるかもしれません。<P> 前掲書で語られている体験を説明する概念『フロー』については十分納得がいきますが,「大河の流れ」については現段階では私には皆目検討がつきません。皆さんも読んだ上で,ご自身で判断してください。
「運命の法則」などと聞くと、極めて胡散臭い感じがします。<BR>人に勧められて読むまで、本書に対してもそんな先入観を持っていました。<BR>確かに本書でも、シンクロニシティなど、目に見えない力に動かされる話から始まります。<BR>それでもなお、読み進めるうちに、本書は極めてマトモなことを言ってると感じました。<BR>読後、本書に対して、非常に共感しました。<P>ビジネスであれ、私生活であれ、我々は時折奇遇な体験をします。<BR>科学的には、偶然の一致として片付けるしかないのでしょうが、体験的には、偶然では片付けられないほど奇遇が続く場合と、やはり偶然だったんだと思える場合があります。<P>著者は、ソニー時代に開発チームの力が相乗的に働き、難問が次々と解決されていった経験を綴ります。<BR>この状態を本書では「フロー」と呼んでいます。<BR>世間的にわかり易く言うと「全員がハイテンションな状態」ということでしょうか。<BR>全く新しい商品を開発する際に、どうしても解決できなかった難問が、チームがフローの状態になることで、あれよと言う間に解決されて行ったというのです。<P>科学的には、潜在意識で他者の考えや言葉などがヒントになり、といった解説ができるのかもしれません。<BR>しかし、実際には何故といった理由など必要ありません。<BR>どうすればチームをそうしたフローの状態にできるか。<BR>どうすれば壁にブチあたったプロジェクトが、現状打破できるのか。<BR>その方法が知りたい。<P>本書で言う「運命の法則」とは、そうした偶然を多く生み出す「方法」のことです。<BR>本書では「なぜ」について説明はありませんが、「どうすれば」について多数の事例を挙げて書かれています。<BR>食わず嫌いをせずに読んで頂ければ、きっと実務に活かせるヒントを得られるでしょう。
ジャンルでは超心理学となっていますが、作者の人生哲学ではないでしょうか。<BR>自分の歩んできた人生の中で経験し、そこで考えたこと、経験したことをわかりやすく書いてあります。<BR>「運命の法則」・・確かにそのとおりですが、実は当たり前の事も書いてあったりします。<BR>そしてその当たり前の事が、ひどく新鮮に感じられます。<P>とても説得力のある、読後感の良い本です。