現在の日本社会の疲弊を歴史的、文化的側面から鋭く批評されています。<BR>文はインタビュー形式で進められていますが、時折的がずれている質問にも<BR>著者は的確かつ刺激のあるこたえが展開されています。<BR>あまりに歯切れよく展開されているので、重要なことをきちんと脳に刻み<BR>込まれない可能性もあるくらいだと思います。<BR>これこそ、著者の言っている「言葉だけで言っても」という状態かも<BR>知れません。<P>再び、著者の言葉を借りますが「自分が自分であることの意味を<BR>感じられるために」何度か読み返してみたい書です。
出版社側のスタンスに疑問。インタビュー形式にしたいようなのだが、P33まで一切インタビュアーが登場せず、その後も無用な相槌が多い。<BR>また、P40に致命的誤植あり。「NEATは、Not in education, Employment, or Training…」(本文そのまま抜粋)って、中核となるテーマの根本概念のところでこんなことをやらかしてはまずいでしょう。<P>その一方で、野田氏の分析の鋭さ(=まともさ)は出版社の拙さを補って余りある。<P>野田氏は、今日の日本ではほとんどの人が幸福を感じていないという現状を指摘した上で、「楽しくなくとも生きていかないといけない」、「満足感、幸福感が低くても、それでもこの社会で、他と比較して幸せだと思い込んで生きていかないといけない」、「国家が強くないとお前も生きていけないぞ、国家が強かったらお前たちは幸せなはずだ」という考え方を退け、「社会を構成している人の相対多数が、幸せだ、と思っているのが、社会として普通なんです」、「個々の、現に生きている人間を幸せにするようなシステムを作らないといけない」と主張している。私はこの主張を至極真っ当なものと思う。非人間的な長時間労働の強制が「社会の厳しさ」などという常套句で正当化され、労働をはじめとしたあらゆる場面を競争原理だけが支配し、そこで疲れ果てた人々の批判能力はもはや擦り切れている。我々はこうした社会が異常であるという認識から始めなければならない。<P>本書は、今日の日本社会社会について考える際に、それぞれの置かれた境遇にそれぞれの意味をもちうる数少ない良書と思う。政治家や経営者なんかにも読んでもらいたいところだ。ただし、前述の問題から満点にはできない。残念だなあ。