医療は21世紀の重要課題としてメデアに載らない日はありません。しかし医療事故や改革の進まないといった暗いニュースが多くなっています。現状の延長の上で一生懸命努力することで解決できるのでしょうか。医師や看護の方の努力や過労は限界を超えていることは病院にいけば自明のことです。医療関係者や患者家族が日々悩んでいることについて、本書は斬新な切り口からわかり易く、説得力のある提案をしてくれています。問題の本質に迫りポイントを絞り挑戦することで、医療行為の分担を変えることで医療行為の改善はもとより病院経営までも決定的な改善が図られることを実証しています。また焼肉屋の例で身近に実感させてくれています。私は現在米国を中心に世界中の医療情報システムの標準化の調査をていますが、この中で多くのコンサルタントが協力して推進していることに疑問を持っていましたが、問題解決に幅広く挑戦しノーハウを蓄積した人が医師や関連者に協力し時にはリードすることで抜本的な解決を図っていることが得心できました。本書を一人でも多くの方が読まれヒントにされたり挑戦されされることを希望します。もちろん私はこの本をできるだけ多くの関連者に進めています。
この本には大きく2つの特徴がある。ひとつは、病院経営上の課題解決に関する重要なノウハウを惜しげも無く開示している点。そしてもうひとつは、トップ経営コンサルティングの経営改革手法が学べる点である。これは「一粒で2度おいしい!」ものであり、その意味から病院関係者と一般企業の方の双方にとって読む価値の高いお得な一冊です。筆者から「結論は全部見せた。あとは現場の人達がやるかどうかだ!」と挑戦状を叩きつけられた気がします。受けて立とうじゃないの!本書が目指しているものは、「医療の心」をベースとした「患者のための医療」や「医療の質の向上」であり、経営改革はそれらを実現するための手段として示されている。利益無くして「患者満足度」も「質の高い医療」もありえない。日本国内の自治体病院は、2002年6月時点で95.9%(前年=88.7%)が赤字である。従来、その経営改善手法として、経費削減・公営企業法の全部適用・公設民営・民間委託などが挙げられていたが、どの手法も問題点と限界が指摘されており、本質を捉えたものにはなれない。「ではどうしたら良いのか・・・」の答えがこの本の中にある。ゆえに病院経営の現場を知っている人ほど、胸に「グサグサ」来ると同時に、改革に向けた明るい道が開けます。保健・医療・福祉の分野は、自治体内部でもレベルの高い職員の唯一の弱点でした。それを一般企業の経営手法を用いて、彼らにも理解出来るように病院経営の世界を解説した画期的なものです。病院経営は経営のプロが考える。そしてドクターはまっすぐ患者さんの病気のことだけを考える。こんな構造が、真の意味での「患者のための医療」を実現するひとつの道かもしれない。この本から日本中の自治体病院の心のこもった本物の経営改革が始まることを期待します。
最終章の理想の病院像は、プロである医師なら誰もが目指す姿であると思う。今、多くの病院が赤字経営を余儀なくされているのは、各医師の正しい評価がされていないことが原因であると思う。表現を変えれば、医師の能力を最大限に発揮させていない病院がほとんどではないだろうか。「人材が死んでいる」という表現は、まさに日常実感する言葉である。他の医療経営の本は最初の10分で嫌になったが、本書は一気に最後まで読めた。著者らの経営コンサルトを受けるか否かは別にして、問題提起として、科学者たる医師にとって読み応えのある本ではなかろうか。