暴行から始まって紆余曲折の果てに純愛に昇華するラブ・ストーリー。怜悧なエリート商社マンが、一見地味めの年上美人に思いがけず激しい恋をして、苦悩して。・・・せつなく、そして途方もなくロマンティックです。<BR>要するに、堂々と、オトナの(上質の?)BL小説の王道を行ってます。<BR>この小説にはちゃんと「お話」としての魅力があります。キャラクターにも華があります。実際、この年上美人は年齢相応の包容力があって、あまたのBLにありがちな「年齢設定だけは高いけど実質的にはキャンキャンわめくガキ」とは一線を画しています。<BR>何しろこの手のお話で、延々と続く性描写ではなく、一晩中羽目をはずした翌朝のちょっと身の置きどころがない気恥ずかしさ、甘く、面映い二人の不器用な会話が一番印象に残ったなんて。このシーンだけでも、この本を買う価値があると思います。
あまね氏、崎谷氏の両方があいまって良い作品にしている思います。自分が誰かに何か与えることのできる存在であると思える時、自分の存在価値が認識できるし、優しくなれるんですね。でも、言葉でいう結論でなくて恋人同士がそこにたどり着くには、傷つけあったり、紆余曲折があったり、時には恋ですらないと思ったり、タイミングが合わなかったり。そして、自分をさらけ出して、自分の一番嫌いな、辛い部分を見つめなくてはいけなかったりして、恋をすると、自分が変わっていく、そんな作品でとても良かったです。
大人向けレーベルの第1弾作品ということで、「ある種のポルノグラフィとして成り立つ」とあとがきにあるように、最初のページの1行目からクライマックス。<BR>それも潔い、ポルノとして楽しませていただきましょうかと読んでみたら、確かにHシーンは濃厚だけど、それ以上の思いがけない収穫でした。<P>商社リーマン(27)×わけあって保父(32)のお話。<P>自分勝手な年下男にやられっぱなしの30男の底知れない寛容とやさしさがいったいどこからくるのか、その「わけあって」が明らかになる後半は涙が止まらなかった。<BR>「なくしたものや過ぎてしまったことはいくら嘆いても元には戻らない。これからを生きていくのみ」<BR>この言葉の意味がわかる人、人生の痛みを知っている大人の心に染み入る作品です。