本書を通読すれば大学学部レベルの生物学に関する基本的な知識が得られます。しかしながら本書の真の価値はそのような単なる知識の習得にあるのではないと思います。語りかけるような文章から紡ぎ出されるのは、著者の生命に対する限りない慈しみから沸々とわき出ている愛情なのでしょう。一見無駄に見えるような物をも包含し35億年以上もの長い長い進化を経て現在の多種多様な生命体系に至った悠久の地球の生命史。本書は「生命の多様性」に対する賛歌といえるでしょう。最近巷で氾濫している、内容が薄っぺらでただ単に興味本位で読まれているエッセイ書やビジネス書などと比べるのは著者の望むところでは無いかもしれませんが、そのような凡百の書物よりも読み物としてもずっと面白く価値があります。教科書だけに留めておくのはいかにももったいない。
最近はやりの分子生物学、ひとつひとつに丁寧な解説とながれ、まるで本当に大学の授業を聞いているような文体。わからないことがすらすらわかる、これさえあれば分子生物学は怖くない。教科書よりも詳しい教科書
コンパクトにまとまっていながら大事なことは必ずおさえてあるので、<BR>分子生物学の基礎知識を仕入れるのにはかなり使えると思います。<BR>ここに書いてある知識があればすんなり先の勉強に進めると<BR>思います。<BR>しかし、この本がいいのはそこではなくて、著者独特の視点からみた<BR>生物学が語られているところです。特に生物全体から見た「ヒト」<P>の位置という視点にこだわっていて、面白く読めると思います。