去年のクリスマス、中学一年生だった娘が「母さんが好きそうだから」と買ってくれたのです。本人も気に入っていたらしく、すごく手のかかったラッピングでした。そしてもらって。。。本当は私が娘に買ってあげたかったなと思いました。本当に素敵な本です!<P>内田也哉子さんの多才ぶりもすごいですが、なんといっても、渡辺良重さんのイラストがいいです。それも、グラシン紙かトレーシングペーパーのような薄紙(この紙質だけですでに参ってしまいます)にに描かれている絵が何層にも重なった世界をつくっています。<P>今年は娘にプレゼントしようと渡辺さんが所属するD-Bros製の渡辺さんでザインのカレンダーを奮発しました。これもかわいいですよ!
この本は、絵本やイラストブック、詩画集というような部類に入るのでしょうが、実物を手に取ってページをめくりはじめた人は、自分がその前に抱いていたどんな予測をも、この本が超えていることを知るでしょう。まず紙の勝利です。こういう絵本体験は今までありません。作者の渡邊さんは以前、カラフルなトレーシングペーパーの重なりで素晴らしくきれいなカレンダーを制作したことがありましたが、これはその応用発展形です。トレペをめくるということ自体が、非常に繊細な行為である上、渡邊さんの淡いタッチの(でもとても明解な)絵が、トレペの透け具合の上から微妙に重なっている。トレペをめくると、1枚の絵が、重なった状態から自立して、次の1枚の絵に移り、それが次の絵の上に重なって透けて見えてくる。そこに内田さんの文章の一節一節が、レイアウトされている。絵と文章は、重なっているようでいて、まったく独立しているような時もあり、独特のリズムで平行して進みながら、時々、完璧に合体する。この静かな、でも生命力に溢れた物語がクライマックスを迎える時、私たちは裏返る。そこで物語は終章に入る。最後のページは真っ白なトレペに、一行の文章だけ。それは最初のページにまた戻るのだろう。深淵ですね。宇宙のようです。曼陀羅という言葉も浮かびます。英訳されたバージョンも見てみたい。
初めてこの本を書店で目にしたとき、その美しさにとても感動しました。とても薄い紙にカラフルで繊細な絵が描かれていて、こどば一つひとつが音楽のように私の中に入ってきました。紙が薄いので次のページの絵と重なって見え、ページをめくるたびに魔法にかけられたような驚きがあります。そして読み終えたとき、なぜかとてもホッとします。何度も何度も繰り返し読みたい一冊です。