「自閉っ子、こういう風にできてます! 」という決め付けっぽいタイトルに同じ高機能自閉者に属する者としてむかっとし、どんなものかとお手並み拝見だと意気込んで読んだが、非常に興味深く、楽しく読めた。<BR>特にニキさんのお相撲さんについてのエピソード、洗濯物干し忘れの回避のためにドラム式洗濯機を買った話、そしてネットでばら巻かれているニキ・リンコ=浅見淳子という根も葉もない噂についての苦しみなどが興味深く、自伝ではまどろっこしくてわかりにくかった藤家寛子さんの匂いや人ごみにまつわる悩み、家族とのコミュニケーションの取り組みなどがわかりやすくまとめられているのが感心した。<BR>自閉者当事者としてのスポークスパーソンとしての彼女たちの功績とそれをきちんとまとめている花風社の努力に拍手を送りたい。
自閉症の人達が暮らしの中でどんなことに苦労しているのかを自らの立場から率直に語った本。<BR>人間誰しも無意識のうちに自分を基準として他人を見ている。体に対しても同様で、体力ひとつとっても本当にいろいろな人がいるのだ。それを改めて考えさせてくれる。「自分ができる事が他の人も出来るとは限らない。」わかっているつもりでもいつの間にやら忘れてしまって、他人のことを責めたり、馬鹿にしたりしてしまう。体ひとつ鍛えるにしても、鍛えることそのものに耐えられない人もいるのだ。<BR>「あたりまえのこと」について、改めて考えるいいきっかけになった。
世の中で“自閉症”という用語はずいぶんと知られるようになってきているけれども、<BR>その実態や本質はなかなか理解されていないように思われます。<P>この本は、自閉スペクトラムの範疇に入ると診断されているニキさんと藤家さんの<BR>お二人と花風社の社長の座談会形式になっています。<BR>社長からは、仕事仲間として接する中で感じる素朴な疑問をニキさんと藤家さんに<BR>投げかけ、お二人からは自閉スペクトラムの人から見た健常の人に対して感じる疑問を<BR>投げかけ、それぞれ自分がどう感じるのかを言葉にすることで、感覚の違いや特徴が<BR>クリアーになっていくところがとてもおもしろいです。<P>同じ自閉スペクトラムでも、ニキさんと藤家さんにも違いがあり、“自閉症”と一括りに<BR>しているけれども、人それぞれなのだということがよくわかります。<P>また、「社会性やコミュニケーションの障害という前に、脳機能の障害<BR>であり、<BR>身体機能に支障をきたすところがあって当然」という見方は、一般にはなかなか伝わっていないところかもしれません。<BR>身体機能の障害が原因で起きてくる社会性の障害なのだという見方ができると、<BR>ずいぶんと世の中でも生きやすくなるのかもしれないと思いました。<P>健常者を“定型発達の人”と呼ぶ呼び方も、おもしろいです。<BR>ニキさん、藤家さんのことをとてもいとおしく感じました。<BR>オススメの一冊です。