村松恒平師による文章上達秘伝シリーズの巻二。正編の「プロ編集者による文章上達〈秘伝〉スクール」の書評でも書きましたが、文章を書くということはいかに生きるかを見つめることであり、その理念がこの続編でも底を流れています。<BR> だからこそ本書は文筆業をなりわいにするつもりのない私のようなサラリーマンにとっても、居住まいを正しながら丹念に読むに値する一冊といえます。<P> 本書の村松師の舌鋒は正編以上に鋭くなっています。<BR> 作家を目指して書き続けているという質問者から、新人賞の一次選考は通過したのだがそのフィードバックをどう受け取って次のステージへ進むべきかという問い合わせがきます。作家になることを、丁寧に順序を追ってゆっくりと階段を上る作業であると勘違いしているかのようなこの質問者に対して、師はこう叱咤するのです。<P> 「作家ってのは非情の世界だよ。<BR> 次のステージなんてことじゃないって。<BR> 作家になりたいんだろ。<BR> そんなものは大股でまたぎ越せ。」<P> こんな風にまさに非情ともいえるような回答があちこちに見られ、「僕はどうしたらよいのでしょう」と迷える子羊然とした質問者の多くが鞭打たれていきます。<P> 巻末インタビューで、師がいみじくも指摘しているように、今の世の中は「短期清算モード」。何年も先に成果が出るような企ては歯牙にもかけず、もっと目先の取り組みで結果を出すことを競っています。<BR> 翻ってみると質問者の多くもなにかしら即効力のある回答を求めるばかりで、自分自身の視野と筆力をじっくりと育てていこうという気構えがないように思えてなりません。<P> いつの日か、師の薫陶を受けて花開いたこれら質問者の文章にどこかで出会えることを楽しみにしています。
文章のプロになりたいという野望を持った様々な相談者から寄せられた内容を、カウンセリング的な手法や技術論、果ては精神論に至るまで丁寧に指導するといった内容。特に目を見張るのが、将来的に望みの無い人や、それまでの仕事をなげうってモノ書きのプロになる夢を追い続ける無謀な人に遠慮なくダメ出しをしてしまうところ。しかもその理由が合理的で決して感情的でないばかりか、どこかに愛情すら感じる。今まで見た「文章の書き方」の類の中でもこれほどわかりやすくざっくばらんで、そして厳しいものはない。「書くことに興味はあるけど整理の仕方がわからない」といった人から、新人賞を狙う作家の卵まで守備範囲はかなり広いが、そのスピリットは意外と単純ではなかろうか。バイブルとしてぜひ手元におきたい一冊だ。
前書に続いて、メールマガジンにおける、読者からの数々の質問に答えた、問答集。<BR>大枠のレビューとしては前書のレビューと同じ文言をここに記したとして、・・。<BR>この書においては、メールマガジンをまとめたものということで、ただ日付を追って掲載されているはずなのに、あたかも前書の続編として端から構成されているかのごとき内容の進展とその濃さ。より著者の真髄に迫ることが出来、より創作への意欲をかき立てられる。身体に宿る力の減退に、滋養強壮に、効きます。