神経科学のものを読むのは初めてでしたが、とても分かりやすく、かつ、推理小説を読むように、次に何が提示されるのかとても興味を刺激されました。翻訳が良く、読んでいる間、感覚が研ぎ澄まされるような感覚も味わいました。自分の意識や感覚を再確認する目から鱗の良書です。
脳科学関係では10年に1度の素晴らしい本。
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<br />「意識」
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<br />哲学ではこれまでギリシア時代以降、何千年も論じられても、科学では
<br />定義すら定まらない、難しく、捉えどころの無い事象。それを、実験的に
<br />積み上げられた「定量的」な事実と、それに基づくモデリングで説明する。
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<br />定量的なモデルと分析結果のすり合わせを行い、螺旋のように一歩一歩
<br />モデルの精度を高めながら、一般化を目指すのが、実験科学であり、
<br />意識の研究がそのフレームワークに入った時代を象徴する、
<br />記念碑的な労作と言える。
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<br />意識研究の「権威」が時々する
<br />「前提なし新コンセプトの提案、宗教がかった飛躍」
<br />が無く、「オッカムの剃刀」に従っている所にも、科学者としての誠実さを感じる。
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<br />Daivid Marrが計算論的視覚研究を先駆けてから30年。
<br />計算論的意識研究の入り口にやっと我々は立ったのでは?
少なくとも上巻は教科書的な要素が強い本です。
<br />それゆえわかりやすいという事が特長としてあげられます。
<br />私の様な初学者にも十分ついて行ける好著です。
<br />翻訳もこなれていて読みやすいと思います。