芦部教授は日本の憲法学界に大きな影響を与え(かなり昔の話だが・・・)現在も重要な地位を占めている。
<br />芦部説がこれほど支持される理由は、旧態の憲法学会に変革をもたらしたからである。
<br />当時の憲法学者は憲法に関して、どうあるべきかという議論しかしておらず、現実の裁判に反映されない、いわば空中戦をしていた。
<br />しかし、芦部教授はハーバードロースクールに留学し、アメリカで憲法についての訴訟について学んだ知識を生かして、憲法という法規範を裁判で具体的に活用できる規範という観点から研究した。これが、芦部説が支持される理由である。
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<br />人権が歴史的にどのようにかたち作られてきたか、人権を考える上での原理原則とは何かを理解するために、重厚に筆者の見解が語られている。
<br />本書は、文章が難解ではないので簡単に読んでしまうが、実は内容が相当深く、熟読しても何が書いてあるかはこの本からだけでは分からない。従って、他の芦部本を読むなり、他の学者の本を読むなり、教授に聞くなりしないと、分かったようで分からない。
圧倒的な支持を得る、憲法の通説を滔々と論じる歴史に残るであろう名著。
<br />だが、忘れてはならないのは徐々にだが確実に芦辺説がその通説としての地位を喪い始めているという点である。
<br />そろそろ、この本を批判的に読む時期がきているのではないだろうか。
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憲法を学ぶすべての人にお勧めできると思います。憲法に関しては、あらゆる先生の本が出版されていると思いますが、先生方それぞれの主張が異なっていてどの主張が一般的にただしいのかわかりずらいと思います。しかし、芦部先生の憲法は、そのほとんどが、日本の通説的な見解です。そして、大方の国家試験の問題に関しての通説は、ほぼこれで完璧だと思われます。初学者には、難しい部分もあるかもしれませんが、読み解く価値のある本だと思います。