佐藤という方は 新聞記事の鈴木宗男関係で知っている程度だった。「日本のラスプーチン」というような いささか怪しげなニックネームでもあり 全く その方を知らないながらも 胡散臭い人なのだろうなと思い込んできた。
<br /> 新聞だけ読んでいると えてしてそんなものかもしれないが。
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<br /> 先日 手島龍一との共著を読んで 佐藤という人に興味が湧き 本書を手に取る機会を得た。一読して 思わず唸ってしまった。
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<br /> 佐藤の読書及び思索は多岐に渡っている。正直 聞いたことが無い思想家や本が頻出する。読んでいても どこまで「読み込めている」のかが 常に分からないまま 読み続けた。
<br /> 但し キリスト教神学に傾倒した異能の才が 外務省という舞台で 一時期活躍したという点は強く感じた。神学と官僚が一人の人間の中に棲んでいる点に 驚いたわけだが 良く考えてみると 宗教と政治とはもともと同じものなのだ。政治をまつりごとという言い方がある通りである というのも佐藤の指摘の一つだ。
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<br /> そんな いわばアカデミズムと 外交という「現実」が出会ったら どのような化学反応が起こるのか。それが 佐藤が自分自身を使ってやってみた「人体実験」であったという事がひしひしと感じられる。
<br /> 結果は 本書の通り獄中に落ちた と言ってしまえばそれまでだ。但し 佐藤は この獄を獄ではなく アジールとして逆手に取ったという点で 見事なしたたかさを見せている。そんなしたたかさが 本書を稀に見る「獄中記」に仕立てている。
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カフカ的不条理ってちょっと大げさすぎ(笑
<br />この著者は現役時代苦労したせいか自分を賢く見せようとする癖があるように思う
<br />もっと肩の力抜いたほうが楽に生きれるのでは?
本書は一読して驚嘆する本である。宗男の側近、外務省のラスプーチン佐藤優が獄中でいかに思索を重ねたかの克明な記録である。
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<br />ここまでの知的で有能な人材が葬り去られる日本のシステムに対して怒りが湧きあがる。
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<br />まだまだ著者は若い。捲土重来を期待したい。