戦後の日本の歴史について知るうえで、非常に役に立つ貴重な証言を含む名著である。さすがにアメリカが誇る優秀な日本学者であり、俗っぽいマスコミ芸者の多いジャパノロジストとは一線を画す、優れた学問の成果であることがよく分かる。このような本をなぜ日本人がかけないかというところに、日本の学問の底の浅さを痛感してしまう。それを感じさせてもらえたこの本は、是非とも一億人に読むことを勧めたいと思った。
今から75年ほど前に日本国は中国に対して侵略戦争を始め、それが太平洋戦争に拡大して米国を中心とする連合国に完敗した。国家は統治能力を失い国土は焦土と化し経済は破綻し人々は悲惨な生活を強いられた。死者は同胞だけで300万人ほどに達し中国大陸だけでも1500万人に及んだ。そして無条件降伏をしてアメリカが占領軍としてやってきた。60年ほど前のことである。
<br /> 占領軍は敗戦後7年間にわたり占領政策を実施した。それは日本の非軍事化と民主化を実現するという基本戦略に基づいていたが直ぐに非共産化政策が付け加えられて東西冷戦下での西側陣営に組み込まれた。著者はこの間における日本の現代史を、時が経過して公開された部分を含んだ多様な資料と一般の人々の真意に対する独自の視点に基づいて、いくつかの切り口から浮彫りにしている。
<br /> 著者は、日本の現代史の画期について、1920年から1989年の約60年間を一つの時代として区分している。この説は一見したところ奇妙に思えるが、この本を読むと傾聴に値することが分かる。それは、歴史的に見れば、今日が形式だけではなく内実においても日本の独立が、自他のために始まらねばならない、画期であることを示唆している。著者は序文で問いかけている。『単に以前よりも自由な社会を作ろうとしただけではなく、日本人は暴力の愚かさをよく理解し、軍事に頼らない平和という理想を、大切に胸に抱いたのであった。これらすべてが、もはや過ぎさった歴史なのだろうか?』、と。
<br />尚、本は上下巻にわかれているがまとめて記しました。
小説のような読みやすい表現。鳥肌が立つほど引き込まれるリアルな文章。ジョン・ダワー懇親の一作が、ここに増補版として誕生した。政策面だけでの占領統治では、日本の戦後はわからない。この本と他の本を絶対的に違うものとしてひきたたさせているのは、第四章・敗北の文化の存在ではないか?戦争に負けた上に、鬼畜米英とまで歌った敵国米兵に好きなようにされる、自国の女達。そしてそんな米兵達に魅せられていく日本の女達。生きるか死ぬかの闇市での生活を余儀なくされる、浮浪児達。何重もの屈辱を間接的にも直接的にも味わわされた、日本の兵士達。<br>力のこもった、重い一冊です。日本人全員必読!