本書は、臨床心理、ノンフィクション、詩というそれぞれ異なる世界で活躍する3人の著名人のシンポジウムの記録を再編集したものである。
<br />
<br /> 本書を通じて感じたのは、言葉を使って表現することの大切さとともに、言葉の背後にある「もの」を伝えていく手段は言葉だけではないということだ。
<br />
<br /> 立花氏によれば、先天的に耳が聞こえない人工内耳を埋め込んだ子供たちは、新しい世界にとまどいながら、きちんと音を聞き分けられるようになると言う。同様に、初めて手話を学んだ聴覚障害者たちは、暗い世界に突然光が差してきたように感じるという。
<br /> また、河合氏によると、言葉を持たなかったケルトやアメリカの先住民たちは、言葉を持つ我々以上に鋭い感性を持っていたという。
<br />
<br /> 掲載されている谷川俊太郎のいくつかの美しい詩の行間に、言葉の持つ言葉以上の表現力を感じた。
<br />
<br />
カウンセラーとして人の話を聞くプロ:河合隼雄.
<br />記者として言葉を書くプロでありながら,膨大な読書で情報を仕入れる読むプロ:立花隆.
<br />そして言葉の奥にあるものを行間に込める言葉のプロ:谷川俊太郎.
<br />
<br />この三人のプロの「読む」「聴く」に関する講演・座談会をまとめたのがこの本です.
<br />
<br />面白いと私が感じたのは座談会での三人の振る舞いでした.河合氏は立花氏・谷川氏にうまく話を振る場面が多く,その一方で立花氏はどんどんと喋る.話題に共通するものをどんどん引き出しから出してくる.そして谷川氏は二人に比べて言葉少なでいて,もっぱら河合氏とのやりとりが多いということ.それぞれの役所が如実に表れていますね.
<br />
<br />座談会をまとめたものなので全体としては,発散というかあちこちにテーマが飛びますが,それぞれでひょこっと顔を出すトピックはどれも興味深いものだと思います.
<br />
<br />まずさわりとして,「読む」こと「聴く」ことを考えるにはいいのかもしれません.