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ゲド戦記 3 さいはての島へ ( アーシュラ・K. ル・グウィン 清水 真砂子 )

これは一人の王子の成長物語である。そして、自分自身であること、光と闇の相克、生と死、永遠の命とは何かを描写した物語である。人生における示唆に富んだことが書かれている。

 第1巻の「影との戦い」では若者だった主人公・ゲドも本書では大賢人となって壮年を迎えています。そのゲドが魔法の力が弱まってきていることを知らせに来た王子アレン(本名はレバンネン)と共に原因を探る旅に出るというのが本書のあらすじです。レバンネンはアースシーを統べる未来の王であり、第3巻では主人公はレバンネンではないかと思いたくなるほどです。この第3巻は、ファンタジーとしての物語性や醍醐味に特に富んでいて、大いに楽しめます。 <br /> <br /> 本書ではゲドとレバンネンは非常に大きな問題に立ち向かうために旅に出るですが、旅に出ることを決意する際の言葉が心に残りました。少々、長いですが、全文を引用します。 <br /> <br /> 「自分の血筋になんの誇りも感じないというのかな?」 <br /> <br /> 「いえ、それは感じています。血筋のゆえに、今、王子としてあるのですから。わたくしには血筋に恥じない行動をとる責任があります。」 <br /> <br /> 大賢人は大きくうなずいた。 <br /> <br /> 「それだよ、わしの言いたかったことは。過去を否定することは、未来も否定することだ。人は自分で自分の運命を決める訳にはいかない。受け入れるか、拒否するかのどちらかだ。ナナカマドは根のはり方が浅いと、実を結ばないものさ。」(P.52-53) <br /> <br /> 身分の高い人がその身分に応じて大きな責任を果たす精神はノーブレス・オブリージュと呼ばれますが、上記のやり取りを通じて、その美しさ・気高さを垣間見た思いがします。『ナルニア国物語』で描かれる創造主による救いとも、『指輪物語』のフロドが見せた実直さと強い意志とも違う、人間の美しさを描いたファンタジーが『ゲド戦記』ではないでしょうか。 <br />

 1巻、2巻にも言えることですが、「戦記」といっても戦争ものではありません。また、RPGのような内容でもありません。 <br /> <br /> 大賢人ゲドと若き王子アレンが世界の均衡を崩す原因を探す旅に出る、その旅を通じてのアレンの成長物語だと思っています。悟りを開いたかのようなゲドに対し、アレンは未熟で何も分からない若者です。ゲドの深みある言葉を最初は理解できません。そのアレンの人間的に成長していく姿がとても印象的です。ゲドの言葉も深く考えさせられるものがありますね。 <br /> <br /> スタジオジブリのアニメ化も楽しみです。

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