ゲドは後景に引き、中心的な人々はゲドと何らかの関わりのある人物に限られる。
<br />
<br /> 世界の均衡を取り戻す話なのだろうか、自分が何者なのかを知る物語なのだろうか。それまでの話と少々趣が異なる。ここで物語りは終わるのである。
<br />
<br /> ファンタジーの要素を上手く統合させている。秀逸である。
ゲド戦記5と題されてますが、六作目にあたります。<br /> ゲド戦記外伝が第五巻にあたります。外伝を読まないと、アースシーの風は半分以上楽しめないかと思います。<br /><br /> これは他の方が、ハードカバー版の外伝のレビューで紹介下さっていました。老婆心ながら、此方に書きました。<br /><br /> 蛇足ですが、「あとがき」の在る無しで、ハードカバー版がお勧めです。
ついに『ゲド戦記』が完結を迎える最終巻です。物語は4巻でその基本思想を変えたものの、4巻で重要な役を担ったテルーが本巻ではレバンネン(第3巻参照)と共に更に重要な役割として登場します。ゲドが表立って活躍することはもうありませんが、レバンネンやテルーの活躍が物語に華を添えています。ファンタジー作品が秀逸な水準を保って最終巻を終えることは読者としての大きな喜びです。
<br />
<br /> 『ゲド戦記』は途中で大きな基本思想の転換があったものの、必ず、現実に存在する問題についての筆者の意見を物語の中に織り込んでいます。第5巻のそれの一つは「親離れ・子離れ」でしょう。もう、10年以上前に親離れできない子供が社会問題化しましたが、今は親離れもしないし、子離れもしないという世相です。「子・親離れ」はかなりの程度、意識的な行動です。逆にいえば、「子・親離れ」は感情に反する行動で、親にしても子にしても辛い部分があります(望ましい部分もありますが・・・)。それでも、子供より先に親は死ぬのですから、子供は生きる術や親元以外の生きるべき場所を見つけなくてはなりません。そうした「子・親離れ」の重要性と、それにまつわる悲喜交々を物語ったのが本巻です。自分の正体を見出して旅立つテルー、見送るテナー、陰ながら見守るゲド、それぞれの姿には胸が熱くなります。
<br />
<br /> 現実への意見を述べながらも、竜と人がかつては一つのものだったという物語上の設定を上手く活かし、物語はファンタジーとしての終焉を迎えます。ここまで大団円にまとまるファンタジーは逆に少ないのではないでしょうか。長く続く作品は、読者の希望を無意識に取り入れるうちに収拾がつかなくなってしまいますから(それはマンガいついても同様)。子供時代に読んでも楽しめますが、大人になってからも学ぶことが多い、非常に優れたファンタジーです。全巻ともお勧めです。
<br />